暑すぎる夏だからこそ、暗く冷たく静かな「深海」を考えよう

私たちはなぜこうも深海に惹かれるのか
藤倉 克則 プロフィール

2013年の特別展は、生きたダイオウイカが深海ではじめて撮影されたことも相まって、約59万人の来場者になり、国立科学博物館の特別展における一日平均来場者数の新記録を樹立するほど大盛況であった。

二匹目のドジョウを狙ったわけではないが、2017年にも深海をテーマにした第二弾の特別展を開催することになった。

このとき私たちを悩ませたのが、前回のダイオウイカのような目玉展示を何にするかである。2013年は、簡単に言うと深海の不思議さや調査する方法を中心に展示した。

ダイオウイカ2013年「深海」展の展示 Photo by TAKA@P.P.R.S / Flickr

議論を重ねるうちに「深海の不思議さよりも、深海を知らないと生命・地球が抱える大きな科学的課題が理解できないし、人類の未来も語れないので、深海のサイエンスと人との関わりを前面に出してみよう」ということになった。

つまり、特別の目玉はないが「科学の発展・人類の持続には深海を研究する科学技術が絶対必要だ」というメッセージを込めることにした。最大の不安は、一見固そうなメッセージでお客さんが来てくれるかどうかだった。

 

ところがフタを開けてみると、総来場者数は60万人を超え、一日平均来場者数も前回を上回って記録更新となったのである。 

このような展示会を通じ、私たちは多くの方が深海の科学に興味があると確信した。一方、特別展の展示は、深く掘り下げた内容にはあまりできなかった。それを補うため、展示品を解説する図録を制作した。

2017年の特別展の図録の担当者は、超スーパースペシャリストで、今年、放映されたテレビドラマ『わたし、定時で帰ります。』の仕事中毒・種田晃太郞のようだった。ちなみにこのドラマの原作者、朱野帰子さんは、「しんかい6500」を題材にした小説も書かれている。

この図録は、手前味噌ではあるが、なかなか読み応えのあるものになった。一方で、深海のさまざまな話題を取り上げたため、どうしても詳細な内容にまでは踏み込めなかった。また、来場者以外は入手しにくかった。私たちは、もっと深く深海が抱える科学や人間との関わりについて説明できる機会を探っていた。

そこに、ブルーバックスシリーズの一つとして、深海をテーマにした本を出版する機会に恵まれた。そして、特別展のなかでも、深海が迫る生命・地球のサイエンスや、人類と深海の関わりについてのテーマを選りすぐって掘り下げることにした。

さらに、特別展では取り上げなかったが最近注目されはじめている海洋プラスチックと深海の海洋保護区なども取り上げた。これらはすべて、深海やフィールド調査で奮闘している研究者や技術者の体験をもとに書かれている。

是非、ブルーバックス『深海──極限の世界 生命と地球の謎に迫る』をご一読いただき、深海で何が起きているのか、深海を知ることの重要性を感じ取っていただければうれしい。