米ロ中「軍拡競争」再び…INF全廃条約失効で、世界は冷戦へ回帰する

日本が食い止めなければならない
半田 滋 プロフィール

事実上の「弾道ミサイル」を開発か

日米安全保障条約は、在日米軍が「装備の大幅な変更」をする場合に日米両政府による事前協議の実施を定めているが、過去一度も実施されたことはない。

これまで在日米軍がベトナム戦争や湾岸戦争、イラク戦争に出撃したとき、日本政府は「出撃ではなく、部隊の移動」と米側に都合のいい解釈を重ねてきた過去がある。

最近でも昨年10月、在日米軍司令部のある横田基地にCV22オスプレイが5機配備されたうえ、近く10機に増える旨、米政府から日本政府に通告があったが、日本政府は事前協議の開催を求めなかった。

 

在日米軍基地への中距離ミサイル配備は、米政府の決断次第といえるだろう。それだけではない。日米両政府は、米軍による自衛隊基地の共同使用を進めており、地勢的にもっとも適した基地が自衛隊基地と判断されれば、米軍のミサイルが自衛隊基地に配備される可能性さえある。

また、防衛省が2018年度から開発を進めている「島しょ防衛用高速滑空弾」も、INF条約の失効に合わせて「ミサイル」としての運用方法が浮上する。

「島しょ防衛用高速滑空弾」は、ロケットのように打ち上げられたのち、高高度で切り離された弾頭部が滑空して敵を攻撃するという、弾道ミサイルと巡航ミサイルを組み合わせた構造となっている。宇宙空間には飛び出さないものの、得られる効果は弾道ミサイルが落下して甚大な被害を与える場合と変わりない。

防衛省の担当者は「島しょが占領された場合に活用する」と説明。沖縄県の宮古島、石垣島で開設へ向けた整備を進めている、陸上自衛隊のミサイル部隊が持つことになるという。

「島しょ防衛用高速滑空弾」のイメージ(防衛省のサイトより)
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しかしもちろん、狙いはそんなところでは終わらない。ロケット部分を大型化し、より射程を長くすれば、他国の領土を攻撃できる中距離ミサイルとしての活用も可能になる。

実は2004年、当時の防衛庁はまったく同じ性能のミサイル研究を次期「中期防衛力整備計画」(2005~2009年度)に盛り込もうとした。与党の安全保障プロジェクトチームへ説明する中で「離島を侵攻された場合の反撃用で、射程は300km以内。他国の領土には届かず、攻撃的な兵器ではない」として理解を求めた。

当時はこれに対し、公明党議員から「あまりにも唐突だ」「日本の技術をもってすれば射程を延ばすのは簡単で、近隣国に届くものにできる」との批判が噴出して了承されず、防衛庁が削除したいきさつがある。

ところが、2018年度防衛費に計上された「島しょ防衛用高速滑空弾」に対しては、公明党は反対することなく、予算案は与党の賛成多数で可決された。これにより、日本で初めて「弾道ミサイル」の開発に道が開けたのである。