米ロ中「軍拡競争」再び…INF全廃条約失効で、世界は冷戦へ回帰する

日本が食い止めなければならない
半田 滋 プロフィール

日本にもミサイルが持ち込まれる

振り返ると、INF条約が失効した背景に、米国とロシア双方による相手国への疑心暗鬼がうかがえる。それでも両国は、中距離ミサイルについては抑制的に対応してきた。

すると、この間に、INF条約に加わっていない中国が独自に中距離ミサイルの開発を進め、条約が禁止する射程に近いミサイルを約1400発保有するようになった。この中には「空母キラー」「グアム・キラー」と呼ばれる通常弾頭の中距離ミサイルが含まれ、米艦艇が台湾問題に関連して中国に接近するのを阻止する抑止能力を高め、中国に対する米国の軍事的優位を脅かす存在になった。

つまり、トランプ氏によるINF条約からの離脱はロシアへの不満ばかりでなく、中国に対抗する狙いも含まれている。

 

いずれにしても、INF条約の失効によって、米中ロは新たな局面を迎えた。米国は中国、ロシアに対抗して、在日米軍基地を含めた太平洋地域への中距離ミサイルの配備を検討している。

本土復帰前、沖縄の米軍基地には核弾頭を搭載できる巡航ミサイル「メースB」が8基32台配備されていた。中国とソ連極東を射程に収めていたが、1972年の本土復帰の際に撤去された。

現在、米国はどの在日米軍基地にも地上発射型のミサイルを配備していない。配備すればINF条約に違反するうえ、その必要もなかったからだ。

米国は核ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)をはじめ、巡航ミサイルを搭載する原子力潜水艦(SSN)や水上艦艇を多数持ち、また核兵器を搭載できる戦略爆撃機を保有する。これらの兵器類は、機動性に優れ、行動が探知しにくいという利点があり、狙われやすい地上基地にミサイルを配備するよりも合理的だった。

米軍のB-2爆撃機(Photo by gettyimages)

また日本政府は「作らず、持たず、持ち込ませず」の「非核3原則」を堅持しており、在日米軍基地に核兵器を配備することはできないといった制約もある。

しかし、ロシアが極東や北方領土に中距離ミサイルを配備する事態になれば、「目に見える対抗措置」をとる必要性から、在日米軍基地への中距離ミサイル配備が浮上する。通常弾頭のミサイルであれば、日本政府は「ノー」とは言わないのではないだろうか。