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日韓が「敵対関係」の中、「慰安婦像」という劇薬がもたらしたもの

「表現の不自由展・その後」中止を考察

逆さまの地図

オーストラリアやニュージーランドでは、普段われわれが見慣れたものと上下さかさまの世界地図が売られている。

南半球の人たちの視点から世界を見ると、新鮮な視点で世界を眺めることができる。たしかに、地図は北が上と決まってはいるけれど、それは人間の勝手な約束であって、絶対的なものではない。

われわれは誰しも、普段見慣れた視点を絶対のように思い込み、それを疑いもしない「認知のゆがみ」をもっている。

だがこれは、病理的なゆがみというよりは、普段から注意しないと、だれもが陥ってしまうわれわれに生まれつき備わった認知のエラーである。

行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、このような認知的エラーを「見たものがすべてバイアス」と名づけた。

これは、目の前にある情報しか確認せず、それがすべてだという「思い込み」から、物事を判断してしまうことである。

 

日韓の軋轢

今に始まったことではないが、特にここのところ、日本と韓国の間の空気がギスギスを通り越して、敵対関係といっていいレベルに至っている。

徴用工問題を端緒にして、日本は韓国を輸出管理上の優遇措置の対象国である「ホワイト国」のリストから外すことを決めた。韓国も報復を検討中だという。

徴用工問題に関しては、国際法的には決着がついている問題を、法治国家の最高裁判所が覆すということは、たしかに国際秩序を無視した暴挙であるといえる。

日本人はその「正義」を高らかに叫んで、韓国を非難するが、「逆さまの地図」ではそれがどう見えているのだろうか。

犠牲になった側からすれば、国際法よりも、自分たちの感情やプライドが大切ということになるのかもしれない。

これは、慰安婦問題についても同じことがいえる。国際法を盾に冷たく突っぱねようとする日本に対して、彼らは理屈よりも感情的に反発するばかりである。