僕がフジロックに絶望した理由…「夏フェス」を劣化させたのは誰か

在りし日の魅力が消えてしまった
雨宮 旅人 プロフィール

「世界一クリーンなフェス」と謳われた時代

フジロックが“特別”でなくなってしまった一番の理由は「椅子」だ。

グリーン、ホワイト、ヘブン、レッドマーキー、果てはアヴァロンや苗場食堂といった小さなステージまで、フジロックのどの場所にも、折りたたみ椅子で場所を取っている人間がいる

特に、レッドマーキーでの場所取りはひどかった。レッドマーキーはフジロック会場で唯一の、屋根のあるステージである。そのステージで、持ち込んだ折りたたみ椅子に座って陣取り、食事をし、スマホをいじり、眠っている人たち。ステージが空いているのならばまだいい。しかし、大雨のせいで混雑したテントの下で、である。

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他のステージから移動してきて、目当てのアーティストを見ようと中へ入ろうとしても、椅子が邪魔で入ることができない。大雨の中、びしょ濡れになっている人たちの前で、平然と足を伸ばしふんぞり返る人たち。その人たちが椅子を畳んで立ち上がれば、待っている人たちは中に入ることができるのに。

中には、ステージ前方で椅子に座ってスマホをいじっている観客までいた。遠目に見るとそこだけ空いているように見えるので、少しでも前でライブを見たい観客がその隙間に入ろうとして、椅子を蹴り、トラブルになっているシーンを、僕は何度も見かけた。

椅子に座りたい人たちは、ステージ間の移動でも椅子を畳まない。畳まない椅子を広げたまま移動するので、椅子の脚が前の人の後頭部にぶつかりそうになる。そしてその椅子をまたステージに置き、座ってスマホをいじり始める。

そのスマホで、ステージのアーティストを撮影する観客も多い。アーティストがステージに現れると、ここぞとばかりにスマホのカメラを向け、写真や動画を撮り始める。これは重大な権利の侵害なのだが、彼らが気にとめている様子はまったくない。

 

さらに目に付いたのが、ゴミの問題。今年も終演後には、放置されたゴミが至る所に落ちていた。自分の食べたものを片付けないで地面やテーブルに置き去りにする人も多かった。かつて、「世界一クリーンなフェス」と謳われたフジロックの姿は、今やどこにもない。

フジロックが「世界一クリーンなフェス」と呼ばれていた頃のことは、僕もよく覚えている。ボランティアによる呼びかけで精密に分別されたゴミが整然と捨てられていく様子は、海外のフェスには無いものだと言われていた。もちろん完璧ではなかった。だが、身に覚えのないゴミでも、落ちていれば拾ってゴミ箱に持って行く人は多かった。