Photo by iStock

遊んでばかりいる天才、空気を読まない人は「カッコいい」か否か

「カッコいい」とは何か大激論・後編
本日は、現代新書メンバー・ヒロシさんの「定年を祝う会」。その最中、突如として始まった平野啓一郎さん『「カッコいい」とは何か』刊行記念「編集部員たちが「カッコいい」と思うものは何か?座談会」。白熱する議論はいよいよ佳境を迎えて……

編集部メンバーがカッコよさを語った前編はこちら⇒『魔裟斗、原辰徳、田中泯…「カッコいい」のは誰か、編集部員が大激論』

名言を残している人はカッコいい

ヨネ:ここで女性が思う「カッコいい」も、ミユさんに語ってもらいましょう。
 
ミユ池田敏雄さん、ご存じの方いらっしゃいますか? 富士通の。もう45年前に亡くなった方なんですが。
 
ハジメ:ああ、天才のエンジニアだ。

 

ミユ:そう、国産コンピューターの父といわれた方です。小学生の頃に見ていたNHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』のなかで一番印象に残っているのが、彼の回なんですよ。これは日本の技術界伝説のドラマですよ!

全ての開発は感動から始まる。何かに感動したら、ひたすら没頭せよ」、「挑戦者に無理という言葉はないんだ」など、様々な名言を残していて、幼いながらにすごいカッコいい人だなと思いました。

ヨネ名言を残している人はカッコいい――『「カッコいい」とは何か』でも指摘されています。

ミユ:彼は社内で「問題社員」と呼ばれていました。東京工業大学を出て富士通に入社したものの、毎日2時間遅刻し、昼休みはバスケットボールに没頭したまま仕事場に戻ってこない。上司に何度も叱られ、後輩にも呆れられていました。

ショウ:出社せずバスケに没頭……いいな~!

ハジメ:おいおい、それは問題発言だよ!

ショウ:カッコ、いいな~です(笑)。

ミユ:入社の翌年、富士通がGHQに提供していた電話が故障し、生産中止になりました。社内は大混乱。ベテラン社員もお手上げ状態。皆が頭を抱えるなか、ふらっと社内に現れたのが池田敏雄。上司に差し出したノートには精緻な数式が。

それは、電話機の故障の原因を特定したものでした。その一件で能力を見出され、富士通のコンピューター開発のプロジェクトを任されることになりました。

富士通の技術を応用したスパコン・京(photo by gettyimages)

「コンピューターを制する者は世界を制す」と呼ばれた時代、そこから30年間開発に力を注ぎ、ついに世界トップシェアのIBM以上の性能のコンピューターが完成した。しかし、彼は突然、くも膜下出血で倒れるんですよ。

富士通のコンピューターの性能を聞きつけたカナダの要人が来日し、迎えに行った池田。羽田空港のロビーで相手と握手しようとした瞬間、倒れたらしいです。社員たちが病室で、「世界一のコンピューターの完成までもうすぐですよ」、「もうすぐ夢が叶います、いま死んだらどうするんですか」って励まし続けたけれど、願いはかなわず。彼が亡くなった翌月にそのコンピューターが完成しました。

有能であれば遊んでもよいか

ハジメ:……ちょっとNHK、脚色しすぎてない?

アキラ:自分が有能であれば、遊びほうけていもいいというあたりが、ちょっとカッコわるいよ。

ミユ:えっ、カッコよくない? 私はカッコいいと思うけれど。

アキラ:いや。どんな振る舞いをしてもいいって思ってるところが、許しがたい。

マサ:学生たちのカッコいい論争が始まった(笑)。

ショウ:努力して、みんなで頑張って成し遂げたということはカッコいいけど……ただ、その前の、「俺、頭いいからなんとかなるだろ」という感じはちょっとな。

ミユ:いや、頭いいから調子に乗っていたわけじゃない。

ショウ:そこは解釈がわかれるよね。

ハジメ:根拠なき自信だけで「俺って天才だから」みたいな人もいるから、本当にすごいものをつくった池田さんの場合はちょっと違うと思うな。ねえ、ヨネ。

ヨネ:そうですね。私、天才ですけど何か?

一同:(呆)

ハジメ:でもやっぱりそういう人はカッコいいよね。俺もカッコいいと思うな。あの人の人生は伝記ノンフィクションの企画になる。彼の生涯を描いた本はあまりないんじゃないかな……。

マサ:論争が書籍化構想の話にまで発展しましたね!

~ 現代新書編集部のメンバー ~

ハジメ アラフィフのイジられ系編集長。得意分野はノンフィクション。「新書の新しい突破口」を見出すべく邁進中
ヒロシ 哲学から少女漫画まで、幅広いジャンルに精通。オビやお土産のセンスは女子ウケ抜群。今年定年を迎えた
ジュン 学術書一筋、温厚で気品溢れるジェントルマン。日本史に造詣が深く、「歴史のプリンス」の異名を持つ

リュウ 元フライデー編集長。最近は新書における「ビジネス書」ジャンルを模索中。昨年後半から組合活動で大忙し
マル 時事・社会系のタイトルで数々のヒットを飛ばす、現代新書のエース。編集長の座を狙っているという噂が……
ヨネ ユーモアセンスは編集部随一、シロクマさんのようなムードメーカー。しかし、その私生活は謎に包まれている

イッツー 某雑誌の編集部に勤務後、3月から現代新書に正式配属されたクール・ガイ。思想書へのパッションは計り知れない
マサ コミック部署より異動して2年の新・プリンス。キラキラの目で誰もを魅了する。若者向け教養書に力を入れたい
ニッシー 文芸書の編集部より人事異動で配属されて2ヵ月。作家担当の引き継ぎ作業に追われて大変そう

ショウ アルバイトリーダーの大学院生。膨大な読書量を誇る、本好き男子。マイブームは現代新書のタイトルから担当編集者を予想すること
アキラ アルバイトの大学生。別の部署に出没することも。おやつのハイチュウが大好物らしい
ミユ アルバイトの大学生。言葉遣いや立ち居振舞いがとても丁寧な体育会系女子。特技は日本に住むパンダの顔を見分けられること
ハヤト アルバイトの大学院生。将来は、文系読者も楽しめるような理系テーマの新書を手がける編集者になりたい