「今まで行った国の中で、いちばん好きなのは?」と聞かれると、私はタイと答えている。仕事でもプライベートでも、毎年行くNYや韓国はじめ、アフリカ大陸や東ヨーロッパ、中南米など、海外に行くことも多い私がそう答えると、もっとニッチな国や地域を口にすることを期待していたであろう相手は少し拍子抜けする(ように見える)。しかし本当にそうなのだから仕方がない。ちなみに手帳を見てみると2018年は自腹と取材とで年間100日海外にいた。

タイは、旅先としてバランスがいいのだ。以前より物価は上がっているとはいえ、日本や欧米諸国に比べれば、まだまだ安い。マッサージ天国でもある。何度も足を運んでいるが、まだ飽きそうにない。その理由は、旅の大きな醍醐味のひとつである「食」が、充実していることも大きい。美味しく、そして、バラエティに富んでいる。日本でもタイ料理が根強い人気を誇っているのはご存じの通りだ。

ところが、タイの中でも「美食の原点」と言われている地方に私はまだ行っていなかった。そこに行かなければタイ料理を知らぬも同然だというのだ。そこでさっそくその地方、「イサーン地方」へ美食の原点を巡る旅に出かけた。

取材・文/長谷川あや 写真/西山浩平

日本で人気のタイ料理
多くはイサーンが発祥

改めてタイ料理に魅かれる理由を考えてみたが、辛さと酸味、甘みを絶妙にミックスさせた独特の味わいが受けているのではないだろうか。タイ料理には、フレッシュな「唐辛子(チリ)」、独特の塩気を持つ「ナンプラー(魚醤)」。甘みには、砂糖の代わりに、「パームシュガー(ココナッツシュガー)」が使われることが多い。これに、「ハーブ」の苦みや青み、「マナオ(タイのライム)」の酸味が加わる。卓上の調味料を使って、自分で味の変化がつけられる、懐の深さもイケている。

ところで、先に書いたように、日本で人気のタイ料理の多くは、タイの東北部・イサーン地方が発祥ということをご存じだろうか。青パパイヤのサラダ「ソムタム」も、タイ風焼き鳥「ガイヤーン」も、ひき肉のハーブ和え「ラープ」も、みんなイサーンが発祥だ。

日本で人気のタイ料理はイサーン地方が発祥。写真は、さくさくとした食感が楽しい、バナナのつぼみサラダ

「え、イサーンってどこ?」

そう思う人も少なくないだろう。約51万3千平方キロメートルと、日本の約1.4倍の面積を有するタイは5つの地域(北部、東北部、東部、中央部、南部)で構成されている。東北部にあたるイサーンは、そのなかでももっとも面積が大きく、タイ全土の約3分の1を占める。そしてここに、タイの人口は約7000万人のうち約2000万人が暮らしているのだ。

そんなイサーン地方が今、新たな旅の選択肢として注目されている。LCC(格安航空会社)が群雄割拠の今、首都・バンコクに、タイの地方都市を組み合わせる旅のスタイルが人気だという。一大グルメエリア・イサーンへの視線はひときわ熱い。今回は筆者が「イサーンならではの美味しいものたくさん食べたい」という思いから出かけたイサーンを巡る旅で、「ぜひ再訪したい」と誓った、美味しく、そして癒されるイサーンのスポットを紹介したい。結論から言えば、イサーンへの大人グルメ旅、おすすめです!

市場(マーケット)では、カラフルなタイプリントの布地が安価で手に入る。当たり前だが、バンコクよりもだいぶ安く、つい財布のひもが緩んでしまう 
ナッツ、豆類、ハーブを中心とした野菜など、日本では見かけない食材も多々。食材の豊富さに驚かされる