リキが夢に出て来てくれた日

そして、こりきが家にやって来て、2ヵ月ほどたった頃のことだろうか。
私は、ちょっと不思議な夢を見たのだった。

こりきは、当時、私のベッドの横に置いたケージの中で寝かせていた。こりきを寝室で自由にさせておくと、「遊べ、遊べ」とうるさくて、寝られたモノじゃなかったのだ。

その夜、私は夢うつつの中で、こりきがケージの中でゴソゴソ暴れている音を聞いていた。と、犬がピョンとベッドの上に飛び乗った気配がした。
え? どうやってケージから抜け出したの?
びっくりしているうちに、布団の中にスルリと犬がもぐり込んできた。

あれ…?

その身体の感触は、こりきのものじゃない。こりきの毛は、まだポワポワのやわらかな産毛だけど、布団の中にいる犬はスベスベした硬い大人の毛並みなのだ。

リキ……?

不思議にハッキリと、そう感じた。

リキだ。
リキが私の所に来てくれたんだ。

布団の中の犬は、ぴったり私に寄り添っている。
指でその身体を触って、懐かしい感触を確かめる。
温もりと、かすかな息遣いを感じながら、私は安らいだ気持ちで眠りについた。

ずっと一緒だった懐かしいリキの感触だった 写真提供/折原みと

新しい子を好きになっていく罪悪感

翌朝目を覚ますと、リキの気配はもう消えていて、ケージの中のこりきが、オシッコの催促でキュンキュン鳴いているだけだった。
ああ、あれは夢だったんだな…って思いながらも、あたたかな想いが胸を満たしている。

天国に旅立って以来、リキがはじめて夢の中に出てきてくれた

私には、それが、リキからこりきへの「バトンタッチ」のような気がしていた。
それまでは、やっぱり心のどこかに、リキを忘れてこりきを好きになって行くことへの罪悪感があったのかもしれない。
だけど、あの夢の中でリキが私に寄り添ってくれた時、「大丈夫だ」って思えた。

リキは、ずっとここにいる。こりきを好きになったって、リキを忘れるわけじゃない。リキの思い出と、こりきの「今」を重ねあわせて、新しい時間を紡いで行くのだ。

あの夢は、私がようやくそれを受け入れた印。私の「悲哀の仕事」が、本当に終わった印だったのだと思う。