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「自分のお金になぜ手数料がかかる?」無料送金にこだわるプリンの挑戦

現金のストレスをなくして社会を変える
マネー現代編集部 プロフィール

お金を自由に動かして、社会コストをなくす

各種手数料が無料というだけで、お金にまつわるストレスはかなり減る。しかし、プリンのサービス設計はさらに貪欲だ。

例えば、返金の催促をしやすくするチャット機能やリクエスト機能、お金の貸し借りがうやむやにならないために履歴を残す機能など、「痒い所に手が届く」細やかな機能がたくさん盛り込まれている。「お金のストレス」に、どうしてそこまで敏感になれるのだろうか。

「お金のストレスをなくす、つまりお金を軽くすることで、社会コストもずいぶん減るんじゃないでしょうか。例えば仕事をする際に、お互い契約を結びますよね。それって、言ってしまえば相手が信用できないからです。50万円分の仕事を月末払いで発注するねと言っても、その人は本当に払うかどうかわからない。だからわざわざ契約の文言をまとめて、契約書に捺印を押して、郵送してというプロセスを踏むわけですよね。でもこれって社会コストだと思いませんか? 信頼関係があれば、そもそも契約書っていらないわけですから」

もともと、そうした社会コストをなくす意図があって、萩原さんはプリンを始めた。

「例えば誰かに紹介するときも、過去に1万円の仕事を10回やって全部きちんと払ってもらっていますよ、ということがわかれば安心ですよね。プリンなどでお金の動きが見える化できれば、それは信用の見える化になるわけです。つまり、契約書は必要なくなるわけです」

 

社会コストは、日本の至るところにはびこっていて、その代表的なものが現金の管理コストだという。

「現金の回収にしても、人員コストがとてもかかります。先日も、コインパーキングを運営する方と話していて、切実だなと感じました。駐車場が200カ所あれば、その200カ所に毎日お金を回収しに行かなきゃならない。でも、もう担い手がいないんです。信頼関係という意味でも、コンビニのように外国人の留学生を雇って、いきなり現金を回収してくれとは言えません。そうすると、5年後のキャッシュレスパーキングに向けて動いていくしかない。そういうときに、お金のストレスをできるだけ減らせるサービスを提供できたら、もっと日本は成長するんじゃないかな」

現金の管理コストは、プリンの次なる一手にも立ちはだかっている。プリンは今年3月、『業務用プリン』という法人から個人に送金できるサービスも提供している。導入企業では、従業員に対して経費の支払いや交通費の清算などで利用しているという。銀行振り込みより手間がかからないし、振り込み手数料も安いのがメリットだ。そのため例えば、今まで月1回だった清算が、週1回できるようになった。

「これは他のサービスとはちょっと違うところです」と荻原さんも胸を張る。ところが今のところ、「給与」の支払いは難しいのだという。

「給与の支払いは今、法律で『現金、もしくは金融機関の口座』と決まっています。ただ、年内か年明けには法改正がされて、資金移動業者経由でも給与を電子マネーで受け取れるようになるだろうと見通しがありました。でもそうなると、銀行口座を使う必要がなくなるし、銀行口座から入金出金する際に資金移動業者が銀行に払っている手数料も大幅に減ります。だから、銀行はものすごく抵抗しますよね。デジタルマネーでの給与払いは、まだ先のことになりそうです」

日本のキャッシュレスの普及が遅れているのも、現金の管理コストが足を引っ張っているからにほかならない。

「日本のキャッシュレスの普及率は、まだ20%くらいです。もちろん、知らないから使いづらいということが大きい。でも最大の原因は、現金の管理コストがものすごく重くなって日本経済の成長を鈍らせているのに、なかなかキャッシュレスに舵を切ることができない社会の空気でしょう。ただ、さすがに人手不足が現実に死活問題となってきている以上、キャッシュレスを推進する空気は、3年もすると社会全体に作られるんじゃないでしょうか」