2019.08.04
# 香港

警察の凄絶な暴力と闇に怒る市民…「香港の今」を日本人は知らない

デモは、新たな段階に入った
ふるまい よしこ プロフィール

「警察」+「親中派」+「マフィア」の疑惑

また、駅の外では親中派の立法会議員も白Tグループのメンバーと談笑している様子が写真に残っており、一部報道によると「よくやった」と声をかけていたと伝えられた。当該議員は事件翌日に(政府会見よりも早く)記者会見を開き、自分が現場にいたのは「自宅が元朗にあり、元朗区住民だから自然なこと」と弁明した。

だが、その会見では最初から黒いTシャツを着たデモ参加者を「暴徒」と呼び、一方で白Tグループを「元朗の原住民たちが自分の土地を『暴徒』から守ろうとしただけだ」と強調した。

この親中派議員が言うとおり、元朗はもともと香港では古い独特の歴史を持つ村だ。明代から続くとされ、少なくともイギリスが香港を植民地にする前からの「原住民」が農業を支えに暮らしてきた。

今では一部はベッドタウンとして開発も進み、マンションも建っているものの、ほんの少し歩いただけでまだまだ伝統的な集落が残っている。その村と村との間には、利益や土地権利の意見の相反からそれこそ武器を手に激しい戦いが繰り返されてきた土地柄であり、イギリスの植民地となってからも反英基地として抵抗活動の拠点にもなった。

植民地政府はその抵抗に手を焼き、伝統文化を尊重するという名目でこの土地に市街地と違った管理形態を敷いた。独自の習慣や文化の継承を許し、今でも家督を男子にしか継がせないという風習が残っている。郷紳と呼ばれる土地の有力者が中心になってほぼ自治運営しており、その組織は形式的には植民地政府や現在の香港政府の下に組み込まれてはいるが、いまだに独自の自治意識が強い地域だ。

このため、同地区を管轄する警察はいやでも現地の有力者との付き合いが求められる。これらの背景を知る香港人にとって、元朗が持つ独特の権力や利益関係が今回の事件において無視できない要素になっていると推測する人は少なくない。

 

実際に、白Tグループはマスクすらしていなかったのになぜかその後もほんの十人程度が逮捕されただけなのだ。だが、その逮捕者の中には香港マフィアの背景を持つ人物が複数含まれており、ここに来て「警察」「親中派」「マフィア」が手を組んだ事件だったのではないかと市民は考え始めている。

この白Tシャツグループの実態は事件から1週間以上たった今も明らかにされていない。市民は警察が発表した、ほんの一部の情報からおぼろげな姿を想像することしかできず、そして無差別襲撃がいつか自分の身に起こるかもしれないと苛立ち、不安を感じている。

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