2019.08.04
# 香港

警察の凄絶な暴力と闇に怒る市民…「香港の今」を日本人は知らない

デモは、新たな段階に入った
ふるまい よしこ プロフィール

その駆け引きの一つはすぐ明らかになった。張長官の謝罪に対して、警察関係者から次々と「張建宗は我われの立場を代表できない」と激しい批判の声が上がったのだ。政務長官は香港の公務員全体を代表する立場だ。張建宗長官は警察を統率する警務処長の上司にあたり、文字通り警察の「上官」である。

しかし、警察からの反発は激しかった。その結果、同政務長官は28日になって、今度は「警察職員が忠実に職務を果たしていることを称賛する」という内容の公式ブログを発表した。

香港政府首脳陣の市民への「歩み寄り」はあえなく潰えてしまったことになる。そして、それは新たに香港政府がその内外において、解決策どころか身動きすら取れない状況に追い込まれてしまっていることを暴露した。

ようやく香港政府は市民に向けて譲歩の可能性を示した形だが、その具体的な方向は明らかではなく、内部の調整がまだまだ取れずにいることは明らかだ。だが、政府がいかなる策を取るのかは結局、燃え盛る運動のカギとなることはまちがいなく、今後の発展を見る上でもその動向は注目に値するはずだ。

7月30日のデモ、警官がデモ参加者に向けて銃を向けている〔PHOTO〕Gettyimages

「元朗事件」とは何だったのか

さて、7月後半のデモのムードの鍵となった元朗事件について、触れておく。

7月21日の日曜日夜、香港島上環にある中国中央政府香港駐在事務所ビル(つまり、中国政府の出張所だ)前の警察とデモ隊の衝突に世界中のメディアの目が注がれた。

このデモは、事前に申請を受けた警察当局が7月1日の立法会ビル突入の経験から、そのルートを政府庁舎があるアドミラルティ地区手前のワンチャイ地区までとするよう短縮を提案、申請者の「民間人権陣線」(民陣)もそれを受け入れ、市民にそのルートを呼びかけていた。

だが一部のデモ参加者がそれを無視、もともとの最終目的地であるセントラル地区まで歩いた後、そのうちの一部がさらに2km先にある中央政府香港駐在事務所ビル前での抗議活動に向かったのである。中国政府からの出張所前での衝突は、「とうとうきたか…」の感があった。

 

だが、この日はもう一つ、その現場から約30km離れた郊外の元朗地区でもデモが行われていた。香港では7月に入ってからアドミラルティ地区から離れた住宅地で、たびたび小規模のデモが開催されてきた。この日の元朗のデモの参加者は、報道によると2000人程度。参加者は揃って黒いTシャツ姿で予定通りのルートを練り歩き、シュプレヒコールを叫び、そして解散した。

「偏地開花」(あちこちで花開く)と呼ばれ、地区から地区へと抗議活動を広げていこうとする意味を持っており、この日のデモはメディアにもその様子が特に報道されることないほどの「いつものデモ」だった。

だが、デモを終えた参加者らが帰途に着こうと地下鉄元朗駅に向かった頃に事件が起きた。

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