7月28日のデモ、警察が参加者を拘束している〔PHOTO〕Gettyimages
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警察の凄絶な暴力と闇に怒る市民…「香港の今」を日本人は知らない

デモは、新たな段階に入った

すでに日本のマスメディアは、香港事情に飽きてしまったのか、思い出したように「大事件」をさらっと現地から拾って簡単に報道して終わりになっている。だが、香港では毎日のようにデモ関連のニュースが流れ、市民はますます、自分たちの意志を表明する場を求めるようになっている。

正体不明、第三のグループの登場

2019年6月、香港で空前絶後の200万人もの市民が反対の声を挙げた「逃亡犯条例」改訂草案反対デモ。それから1ヶ月後、デモはその草案の成否を完全に超え、香港特別行政区政府(以下、香港政府)とその制度を揺さぶる大きな抗議活動に発展している。

この間、日本のメディアも報道しているように7月1日の返還記念日にデモ隊による立法会議場突入と占拠があった。

7月1日、デモ隊が議場に突入した〔PHOTO〕Gettyimages

その翌週には郊外の住宅地、沙田(サーティン)で認可を取って行われたデモが武装警察の挟み撃ちに遇い、休日のショッピングアーケードに逃げ込んだ参加者が警察に追われる大捕物に発展した。そしてその混乱の中で、デモ参加者の顔を鷲掴みにした警官の指が噛み切られるという、これまた前代未聞の事件も起こっている。

だが、7月下旬に入った今、もうすでにそれらの衝撃は遠い出来事のように感じられる。

というのも、7月21日には香港島にある政治の中心地、アドミラルティから30km離れた郊外のベッドタウン元朗(ユンロン)で、身分不明の男たちが市民を無差別襲撃し、妊婦を含む多数の負傷者を出す事件(以下、元朗事件)が起こったからだ。

これまでは、逃亡犯条例改訂草案を軸に、市民と政府・警察が対峙するという形だった抗議活動に、新たに正体不明の第三のグループが乱入したのである。

後述するように、警察はこのグループに対して十分な捜査を行わないどころか、同グループとの関係を疑わせるような行動をとっており、この男たちが何らかの形で香港政府や警察の意図を受けたものではないかとメディアや市民は疑っている。こうした状況を受け、街角だけではなく、各職場で、また香港政府のお膝元である政府内でも、事件のおぞましさに怒りが高まっている。

いったい香港で何が起きているのか。

 

事態の収拾に失敗する香港政府

現在、香港政府はどのように考えているのだろうか。さすがにこのままではまずいと感じたらしい香港政府から、7月26日夕刻、政府ナンバー2の張建宗・政務長官が記者会見し、元朗事件に対する対応が「市民の期待に応えられなかった」ことを謝罪、そして「政府は今、一所懸命に事態解決策を考えているところだ。時間と空間をいただきたい」と、初めて市民に懇願した。

張長官の謝罪は林鄭月娥・行政長官の同意の下で行われたものであることは間違いない。しかし、これまでずっと名指しで行政の長としてその責任を問われている林鄭行政長官ではなく、政府ナンバー2といいつつも歴代の政務長官と比べても影が薄い張長官が市民の前で謝罪する形を取ったことからしても、「解決方法を探っている」といいながら香港政府がさまざまな駆け引きを巡らせ続けていることがわかる。