「黒社会集団(=暴力団)」の後ろ盾が公安警察幹部という中国の現実

地方の「顔役」に、国家権力が癒着する
北村 豊 プロフィール

いまだ統制は地方、村落に及ばず

それでは中国が標的としている「黒悪勢力(反社会勢力)」とは何なのか。

分かりやすく言えば、「村覇(村のボス)」「郷覇(郷のボス)」である。彼らは血縁組織や地域連盟に基づき、「自恃山高皇帝遠(山が高く、皇帝からは遠いことを頼みとして=外部から干渉されないことを良い事に)」、軽症なら郷里でのさばり、至る所で揉め事を引き起こすし、重症なら役人や商人と結託して、人々の血と汗の結晶をほしいままに剥奪するのである。

彼らがこのような悪事を働く背後には、彼らを公安警察の干渉や取締りから守る権力者の存在が不可欠であることから、彼らは利益を餌に権力者を篭絡して「保護傘」とするのである。

 

上記(3)で、「中国の“政法機関”、とりわけ公安部門の法執行者の人数が突出している」と述べた。中国の検索エンジン大手「百度」が運営する百科事典である「百度百科」は「政法機関」を次のように記述している。

「政法機関は中国の“専制(独裁)”機関であり、主として検察院、法院(裁判所)、公安機関、司法行政(監獄および労働教育を含む)、国家安全部門、反邪教部門(邪教取締り部門)の6部門を含み、その重要な職責は公民の為に法を執行し、社会の公平正義と国家の長期安定を維持することにある。県・区レベル以上の行政区域には政法委員会(郷・鎮レベルは政法委員)が設置され、中国共産党中央委員会が全国各地各レベルの公安、検察、裁判所、司法行政、国家安全などの部門が展開する活動や社会安定の維持に対するマクロ的指導協調と監督に責任を負う」

要するに、政法機関とは中国共産党が独裁政治を行う上で必須な、国民を統治、管轄、監督するための機関であると言える。

政法機関を形成する主体の6部門は上述の通りだが、彼らを「保護傘」とすることができれば、中国社会で怖いものがなくなるのは自明の理である。

その中でも実際に犯罪を取り締まる公安機関を「保護傘」とすることができさえすれば、鬼に金棒で、何の憂いもなく反社会勢力としての活動を展開できるのである。

上記(3)に「上記の通達された事例を見ると、中国の“政法機関”、とりわけ公安部門の法執行者の人数が突出している」とあるのは、正しくこの実態を指している。

たとえば、今年7月までに黒龍江省の政法系統では8人が反社会勢力の「保護傘」であるという理由で取調べを受けたが、その中にはチチハル市公安局フラルキ分局局長の杜治林、大慶市林甸県公安局局長の賈耕田、牡丹江市公安局公共交通分局元局長の王憲斌という3人の幹部職員が含まれていた。

7月29日付の北京紙「新京報」は海南省における反社会勢力の「保護傘」取締りの状況を以下のように報じた。

海南省の紀律検査・監察機関は、2019年1月から6月30日までの6か月間で、324件の反社会勢力の「保護傘」事件に関連して地域の共産党と政府の幹部345人を容疑者として立件した。

このうち、調査が終了したのは131人で、そのうちの122人は共産党の党規約違反の処分を受け、34人は司法機関へ送致されて法に照らして処罰を受けた。残りの214人は調査中である。

政法系統だけに絞ると、「保護傘」事件は166件で容疑者は177人であったが、調査終了は79人で、20人が司法機関へ送致された。

反社会勢力の根絶が中国共産党の権力基盤強化に直結すると考える習近平政権にとって、「保護傘」の摘発は最重要課題の1つである。上述の海南省だけでなく、全国の省・自治区・直轄市は「保護傘」の摘発に全力を傾注しており、その成果を誇らし気に続々と公表している。

しかし、反社会勢力は雨後の筍で、どんなに取り締まっても次から次へと生まれて来るものであり、それと同様に、欲に目がくらんだ役人が新たな「保護傘」として機能するようになるのを止める術もないのではなかろうか。これこそ正に「いたちごっこ」で、この闘争は際限なく続くと言えよう。