「黒社会集団(=暴力団)」の後ろ盾が公安警察幹部という中国の現実

地方の「顔役」に、国家権力が癒着する
北村 豊 プロフィール

「保護傘」の正体

ところで、2018年1月の中国共産党と中国政府国務院の通達で始まった中国における「反社会勢力一掃特別闘争」(以下「反社会一掃闘争」)は、上述した中央指導チームを全国各地へ派遣して、習近平総書記の指導の下で地方にはびこる反社会勢力を根絶やしにするための闘争を展開している。

そうした反社会勢力が頼むのは、彼らの「保護傘」として機能する地方政府の役人やその上に連なる中央政府の役人なのである。

中国共産党中央紀律検査委員会(略称:中央紀委)と中国政府国家監察委員会(略称:国家監委)が主管する日刊紙「中国紀検監察報」は2019年4月25日付で、『断固秘密漏えいの「内鬼(内通者)」を取り除け』と題する記事を掲載した。これを中国メディアは「“保護傘”の正体暴露記:誰が反社会勢力に助勢して尽力するのか」と表題を変えて転載した。

 

(1)出資して配当金を受け取る、厳しい取締りを阻止する、後ろ盾になって支援する、仕返しをする、秘密を漏洩する、犯罪行為の責任を言い逃れる、事件をもみ消して調査をさせない。これら反社会勢力の“保護傘”が行う多様な手口は、「反社会一掃闘争」が徐々に深化するにつれて次々と見破られているのが実情である。

(2)4月3日に中央紀委・国家監委のウェブサイトが報じたところによれば、2018年以来の通達で明るみに出た反社会勢力の後ろ盾に関する典型的な事例84件を分析した結果、秘密の漏えいが全体の2割以上を占めたという。今年は「反社会一掃闘争」を徹底する重要な年である。「保護傘」を取り除くことは特別闘争の重要事項だが、内外で結託してグルになる「内鬼(内通者)」を断固除去して、秘密漏えいを絶滅させねばならない。

(3)法執行部門が反社会的性質を帯びた重要な違法事件を操作する際に、情報の秘密保持がとりわけ重要であることは、疑う余地がない。もし誰かが反社会分子に情報を流すようなら万全の体勢で防止せねばならないが、一体誰が反社会勢力に助勢して尽力するのか。上記の通達された事例を見ると、中国の「政法機関」、とりわけ公安部門の法執行者の人数が突出している。今年4月以降で見ると、天津市、河北省、黒龍江省、安徽省、江西省、貴州省、雲南省などで公安系統の指導幹部多数が取調べを受けると同時にその事実は公式に通達されたが、その半数以上は反社会勢力の後ろ盾になっているという容疑によるもので、その中には秘密漏えいの内通者が少なくなかった。たとえば、雲南省迪慶州維西県公安局の元党委員会委員で副局長の和勁輝は、維西県「反社会一掃闘争」作業チームのチーム長でありながら、反社会勢力の後ろ盾として反社会勢力の取締りに関する秘密情報を反社会勢力に提供して賄賂を受け取っていた。この事実が判明したことにより、和勁輝は公職を解かれ、検察機関へ送致されて起訴された。

(4)さらに、注目すべきは、反社会勢力へ秘密漏えいを行うグループの中には、警察官の法執行を助け、公共安全の維持に責任を負う「輔警(補助警官)」の比率が相当に高い事であった。補助警官は臨時のアルバイトに過ぎず、給与が安いので、少しでも手っ取り早く稼ごうと安易に考えて、反社会勢力に秘密情報を流しているものだが、これは無責任この上ない行為である。補助警官の一部には団結して反社会勢力の後ろ盾となる事例もある。2017年1月から5月において、広東省中山市公安局阜沙分局阜城派出所の補助警官7人と阜沙分局治安大隊の補助警官1人の計8人は、違法に賭博場を開設している陳某に対して何度も公安局の賭博取締り部門の動向や人員に関する情報を流して陳某が取締りを免れるようにし、1人当たり3100元(約5万円)から6500元(約10.4万円)の“好処費(賄賂)”を受け取っていた。2017年5月、彼ら8人の補助警官は公安職員によって逮捕された。

(5)反社会勢力へ情報を提供する者の中には、地方の共産党や人民政府の指導幹部も含まれている。彼らの人数はさほど多くないが、その性質は悪らつで、自分の地位や職務を利用して得た重要な情報を反社会勢力へ流し、地元政府や一般住民に多大な損害を与えることもある。

(6)一部の反社会勢力はあらゆる手段を講じて中国共産党員の幹部を「自己人(身内)」に変え、それによって彼の権力を利用して情報漏えいを行わせたり、請託を受けさせるなどする。広西チワン族自治区永福県政治協商委員会の幹部である劉永祥は長期間にわたり永福県にはびこる犯罪集団のボスである李佳およびその構成員と密接な関係を持っていた。劉永祥は李佳に職務上の便宜を図るだけでなく、政治協商委員に当選した後は工事案件などで李佳が利益を得るように支援し、李佳から39.15万元(約630万円)の賄賂を受け取った。さらに、劉永祥は李佳が経営する安棉採石場に出資して株主となり、40.65万元(約650万円)の利益を得た。また、李佳の請託を受けて、李佳の犯罪集団の幹部が逮捕された際に、司法部門に声掛けして保釈を取り付けた。劉永祥はその他の紀律違反・法律違反の存在もあって、中国共産党の党籍はく奪、公職解除の処分を受けて、司法機関へ移送された。

中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」は7月18日付の1面記事で「反社会勢力を放任し、甚だしきに至っては「保護傘」になるということは、『中国共産党の根幹を揺るがし、中国共産党の活動を阻害する』8大問題の1つであると表明した。これは「反社会一掃闘争」を徹底的に推進することを改めて表明したものであった。

7月13日に開催された中央紀委の会議で、反社会勢力と「保護傘」の調査を徹底的に推進することが確認されたが、会議に出席していた中国共産党政法委員会秘書長の陳一新は、「全国反社会一掃弁公室」が「保護傘」であると認定する政策を制定する作業中で、当該政策は近く正式に実施されると述べた。すなわち、「保護傘」を定義づけることにより、反社会勢力の後ろ盾として機能している人物を判別しようというものである。