「黒社会集団(=暴力団)」の後ろ盾が公安警察幹部という中国の現実

地方の「顔役」に、国家権力が癒着する
北村 豊 プロフィール

事例2・于一家の場合

一方、6月10日に起訴された于文波は元ハルビン市人民代表大会代表(日本の市会議員に相当)であり、億興房地産公司(億興不動産公司)の董事長(理事長)である。

于文波が関与した暴力団事件は、上述した中央指導チームが黒龍江省紀律検査委員会に処理を命じて引き渡した案件で、「4・17特別事件」と呼ばれ、40人の犯罪容疑者が逮捕されたものであった。

1970年生まれの于文波は、16歳で父親から職を譲り受けて呼蘭県燃料公司の職員となり、23歳でハルビン市利民経済開発区管理委員会へ移籍したが、その後は2018年5月に退職させられるまで公務員の地位を保っていた。

彼は多数の刑事犯罪に関与したが、公務員の身分には何らの影響を受けることもなく、2000年12月には呼蘭県建設局により呼蘭建設公司の会長に任命された。

その後、呼蘭建設公司の株式を購入した于文波は社名を億興房地産公司(億興不動産公司)に変更し、その後さらに億興集団(億興グループ)を設立し、傘下には10社余りの企業を抱えるようになった。

宇文波は長年にわたり呼蘭区のスチーム暖房と環境衛生の分野を独占していた。2007年に呼蘭区長事務室が億興グループに呼蘭区旧市街の清掃事業を請け負わせる決定を行ったが、その決定は呼蘭区城市管理局による入札を経ない違法なものだった。于文波はこの決定を受けて速やかに億興清掃公司を設立して清掃事業を開始した。

2007年12月に呼蘭区は関係指導者の承認を受け、財政資金を使って10台の除雪車を購入し、それを無償で億興清掃公司へ貸与したが、これも違法なものであった。

2012年と2013年には、呼蘭区の清掃ステーション職員の名義で行われた申請に応える形で、呼蘭区城市管理局は違法にも呼蘭区財政局に対して億興清掃公司のために公傷保険料21.9万元(約350万円)と賃金136万元(約2180万円)の支払を要求し、呼蘭区財政局はこれらを億興清掃公司へ支払ったのだった。

于文波は2004年から2017年までの14年間に国家公務員へ現金7万元(約112万円)、ギフトカード222万元(約3550万円)以上、5万元(約80万円)相当の事務用机と椅子のセット5組を贈っていた。これらの賄賂を贈ることにより、億興グループは種々の便宜を受けて事業を優位に取り進め、不当な利益を獲得していたのだった。

 

上述したように、于文波は多数の子分を抱えた暴力団を組織してありとあらゆる犯罪を行っていたが、そうした犯罪も買収した役人を通じて目こぼしや黙認してもらっていた可能性が強い。

それにしても、上述した楊光は元全人大代表であり、于文波は元ハルピン市人民大会代表であり、彼ら2人は恐らく中国共産党の党員である。

暴力団のボスとして地域社会に君臨していた人間が、国会議員や市会議員になることは、日本では考えられない話である。

また、国会議員や市会議員を経験した人間が、役人に賄賂を贈り、利権をあさって金儲けをするというのは不思議な感じがするが、日本でも数十年前には似たような話があったから、中国社会が未だ成熟していないということを表わしているのかもしれない。