「黒社会集団(=暴力団)」の後ろ盾が公安警察幹部という中国の現実

地方の「顔役」に、国家権力が癒着する
北村 豊 プロフィール

事例1・楊一家の場合

逮捕された楊光はかつて中国の国会議員に相当する全国人民代表大会代表(略称:全国人大代表)であった。

彼は1999年に黒龍江明悦建築工程公司を設立し、2005年には登録資本金3000万元(約4億8000万円)の明悦房地産開発集団(明悦不動産グループ)を組織し、同グループの董事長(理事長)になった。

2007年にハルビン市利民開発区で竣工した「明悦浪漫城」は、明悦不動産グループが建設した住宅総数2810戸、延床面積31.2万平方メートルの一大住宅団地であった。

明悦不動産グループの理事長が楊光の表の顔であり、裏の顔は暴力団のボスであった。6月29日に呼蘭区の北を流れる呼蘭河に面した明悦湖風景区にある楊一家の組事務所を十数両の警察車両が包囲して、楊光とその妹の楊栄が屋内から連行された。

 

この場面はネットの動画を通じて全国に報じられた。組事務所があったのは明悦湖庄園という名の楊光個人の邸宅で、部外者の立ち入りは厳しく制限されていた。

かつて取材を許された新聞記者が報じたところによれば、庄園内には巨大な養魚池があり、その奥には蓮池に映える形で独立家屋の別荘と2つの車庫が立ち並んでいた。1つ目の車庫には2台のジープ車が置かれ、2つ目の車庫には特別提供のマオタイ酒がうず高く積まれていた。

楊光は毎年1000万元(約1億6000万円)を出して特別提供のマオタイ酒を購入しているのだという。さらに、彼は数十匹の犬を飼い、数百の鶏や鳥、珍しい金魚などを飼育していた。要するに、楊光は富豪の仲間入りを果たし、カネにあかした贅沢三昧な生活を送っていたのである。

2006年に楊光の兄弟である楊宏が鑫瑪熱電集団(登録資本金:2億元〈約32億円〉)を設立したが、この集団の前身は呼蘭河畔にあった野菜・果物卸売り市場であり、それをベースに経営難に陥っていた国営の呼蘭熱力公司を譲り受けて設立したのが鑫瑪熱電集団であった。

この鑫瑪熱電集団が行った不正を中国政府の中央掃黒除悪督導組(中央反社会勢力一掃監督指導チーム;以下「中央指導チーム」)が調査した結果、不正に関与していたと認定されたのが上述した14人の役人であった。

当然ながら、実際に不正を行っていたのは楊光とその妹の楊栄を中心とする楊一家であるが、不正の詳細は現在調査中だという。また、楊一家には違法な砂利採掘の嫌疑もかかっているとのことで、そこにも役人の関与が疑われている。