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パンダに次ぐ人気の「ハシビロコウ」。人を夢中にさせる7つの秘密

動かなくてかっこいい…らしい
今泉 忠明 プロフィール

いかに動物園の面白さをアピールするか、大問題となった。各地の動物園でさまざまな妙案が試された。

一番有名なのは北海道は旭山動物園の取り組みだろう。小さな動物園だが、動物が本来もっている行動や生態を引き出して見せる「行動展示」の手法を取り入れて、潜水するアザラシやカバを見せた。これが功を奏して入園者数が激増、ついには上野動物園を超えて日本一になったのである。

以来、動く動物たちをいかにして見せるか、工夫が凝らされてきた。ところが、ここでハシビロコウの登場だ。まったく動かなくても人気がでるんだ、という驚きは動物園関係者もびっくりしたことだろう。あの奇っ怪な風貌をしたハシビロコウが人気者になったその秘密をここで解き明かそう。

 

1. ワイドなくちばし

栃木県・那須どうぶつ王国のカシシ。推定7歳のメス、タンザニア出身。性格は気分屋だそう〔PHOTO〕南幅俊輔/『ハシビロコウのすべて』より

ハシビロコウはごく広い意味で、コウノトリの仲間だ。そのくちばしは細く長くスマートである。が、ハシビロコウのものは異常なほどに頑丈そうで幅が広い。これが奇怪な顔つきを作り出す一つの要因となっている。

鳥類のくちばしの形は、食べ物と密接に関係している。小さな穀類をついばむスズメのような小鳥は短いくちばしだ。キツツキのように木の幹の下に潜む昆虫の幼虫を食べるものは鋭く尖ったやや長いくちばしをしている。コウノトリは湿地のカエルや小魚、エビなどを挟むのに適した長いくちばしを備えている。

ハシビロコウの幅広いくちばしは、ハイギョのような大きな魚類を捕獲するのに適応したものである。ワイドなくちばしの先には鋭いフックがあり、これを引っかければ獲物に逃げられない。あとは獲物をくわえて弾みをつけて飲み込むだけである。

2. 縁は笑ったようにカーブ

上野動物園のハトゥーウェ。推定17歳以上のオスで、出身はタンザニア。右足の黄色いリングがついているのが目印〔PHOTO〕南幅俊輔/『ハシビロコウのすべて』より

くちばしを側方から見ると、上下のくちばしがピタッと合うが、そのラインはたいていはまっすぐで隙間がない。スキハシコウというコウノトリの仲間は、この上下のくちばしの接合部分に隙間がある。くちばしの先と根本はピタッとついているが、くちばしの中ほどに隙間があるのだ。大きな獲物をくわえるのに隙間があった方が具合が良いらしく、あらかじめくちばしに隙間がある、というわけだ。

スキハシコウのくちばしも変だが、ハシビロコウのものはもっと変だ。ワイドなくちばしを横から眺めてみると、くちばしの縁がごく浅いU字形にカーブしていて、人が笑った時のようである。頑丈なくちばしで笑っている! というアンバランスが、奇怪な顔つきを愉快なものにしている。喜劇役者がコワイおじさんを演じているかのような錯覚に陥る。くちばしをやや開くと「笑顔」がさらに強調される。