日常よりも、遂行すべき仕事、果たすべき役目がたくさんある。これらを覚えさせ習慣にするまで、ある程度時間がかかる。

「もう、ほらっ!動きなさいよ。さっさとやりなさい!」

フェリーでののんびり感は一掃され、東京にいた日常のように母が怒鳴り続けている。ふと見れば、隣のサイトのお母さんも「もう、ママとパパばっか働いてるじゃん。もうっ!遊んでばかりいるなら(キャンプに)連れてこないよ!」と叫んでいたりする。

思い切り遊ばせるためにキャンプに来たのに、これでは本末転倒じゃないか。

叱られた長男は「もう、キャンプなんか来なければよかった」とすね始める。長女はその場の空気をサッと読む第2子らしく「ハルちゃん(犬)の散歩、言ってくるね!」とその場からいなくなる。

だが、うまくペグが打てたら「すごい!大人がやったみたいだね」と褒められ、大量の水を運べば感謝され、山盛りの小枝に歓声が上がれば、子どもたちはまんざらでもなさそうだ。

テントが設営された瞬間。ターフが張れた瞬間。焚火に火が回り始めたとき。自分が切った野菜の入ったカレーが出来上がったとき。子どもも、大人も、家族丸ごと大きな達成感に包まれる

アクシデントごと「キャンプ」

一方、アクシデントもある。
大雨に襲われた日。雨上がりの後、近くの温泉に行こうと車を出したが、タイヤがぬかるみにはまって動かなくなった。夫がアクセルを踏むのと同時に、家族3人で車を押した。なかなか出ない。見かねた隣のサイトのご夫婦も手伝ってくれた。

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「せーのっ!」

その瞬間、車が動いた。
「やった!!」

歓声のあと、私は「ぎゃっ!」と悲鳴を上げた。全身真っ黒に染まった娘が手をぶらぶらさせている。タイヤがぬかるみを飛び出した拍子に飛び散った泥水を頭からかぶっていた。

大泣きするのではと思ったが、真っ黒の顔から白い歯がにょきっと現れた。
「ママぁ~、まっくろくろすけになっちゃったよ~」とケラケラ笑っている。
まくろくろすけは、ジブリ不朽の名作「となりのトトロ」に出てくる妖精(?)たちだ。

車から飛び出してきた夫が噴き出し、息子も爆笑している。手伝ってくださったご主人が「ここで笑えちゃえるのっていいですねえ。ぷっ」と笑いをかみ殺していた。