日本中で3万人に授業した私が「教育は秋田に学べ」と主張する理由

教育は「現場」が最も重要だ!
芳沢 光雄 プロフィール

「でんたくに√っていう記号があるけどなんですか。どんな数でも√をずっとやれば1になるのはなぜですか」

これは、どんな正の数でも次々と平方根をとっていくと1に収束(限りなく近づく)することを意味している。よくぞ気づいたものだ、と面白く思ったのだ。

  清水有度第一小学校と清水船越小学校の間にある、清水船越堤公園の風景

思えば、2007年12月に来日したグリアOECD事務総長は「知識を記憶して再現することしか学んでいない生徒は、将来の労働市場で通用しないだろう」と述べた。ここで彼が訴えたかった教育とは、まず試行錯誤して考える、という校長先生の教育方針と同じものだったのではないだろうか。

新しい発見は、何でも試行錯誤から始まるのだ。

人気の題材は

中学校への出前授業では、「算数・数学を教えるには、実生活に結び付いた生きた題材を用いると興味・関心は高まる」ということを筆者も学ぶことができた。

当初は母校の慶應義塾普通部や東京家政大学附属女子中学校など、首都圏の私立中学校に手弁当で訪れた。

その後も何回か訪れた東京家政大学附属女子中学校では、2003年に拙著の絵本『ふしぎな数のおはなし』を80人の生徒にプレゼントしてアンケートをおこなった。どのような内容が面白かったか、生の声を集めたのである。

その結果、評判が良かったのは「じゃんけんの膨大なデータからの有利な方法」「整数の性質を用いた誕生日当てクイズ」「あみだくじの仕組み方」といったものであった。

  「コイン投げ」「じゃんけん」から確率を学ぶ筆者の講義

いずれも「身近な生きた題材」を扱ったものである。このアンケート結果は、筆者の原点として今も大切にしている。

大都市圏が地方に学べることは多い

教員の過酷な勤務状況が問題となって久しい。

現在、全国で「ブラック」な状況に陥っている中学校は、明るみに出ないものを含めるとかなり多いはずだ。実際、筆者のある優秀な教え子は、大都市圏の中学校で数学を教えているが、待遇の良い「正規の専任教員」を自らの意思で辞めて、あえて待遇の悪い「非常勤教員」として、なった。

筆者は、いわゆる「ブラック」な勤務状況がまったくない秋田の西仙北西中学校の先生方と、こうした問題の本質を探るために夜遅くまで話し合ったことがある。

 

そこで得た筆者なりの結論は、「地域の子どもたちはみんなの子ども」という連帯感がいい形で残っている地域では、教員の負担が地域の人々に分散され、「みんなで子どもたちを育てる」という形で成果が表れている、というものである。

秋田にみられるような「地域の子どもたちはみんなの子ども」という発想は、ブラックな学校の問題解決に向けて何らかの参考になるだろう。