日本中で3万人に授業した私が「教育は秋田に学べ」と主張する理由

教育は「現場」が最も重要だ!
芳沢 光雄 プロフィール
秋田県秋田県内で撮影 Photo by Ryan Bailey / Flickr

当時は「ゆとり教育」の“成果”をめぐって、生徒たちの学力が問題になってきた時期である。

全国学力テストが始まる前年の2006年に発表された全国規模の調査結果において、「3+2×4」という問題の正解率が4年生から6年生になるにしたがって悪くなり、6年生は58.1%であったことが注目された。

筆者も、この問題を第1回の全国学力テスト(2007年)の結果公表前に、大沢郷小学校と首都圏の小学5年生で試してみた。その結果、前者は約20人の生徒全員が正解で、後者は約40人の生徒の約半数が正解であった。

秋田の小学生は、なぜ全員が正解できたのだろう。

いろいろ尋ねてまわることで、筆者なりの結論を得ることができた。この地域には塾もなく、子どもたちは特殊な教育を受けていない。だがその一方で、「少人数教育」と「復習」が徹底されていたのだ。

つまり、きめ細かい指導の“成果”があると悟ったのである。

大仙市大仙市内の雪景色 Photo by PhotoAC

中学校でも同様である。西仙北西中学校は、冬季は雪深い地域ゆえ寄宿舎まである学校であった。過疎地の学校と表現しても許されるだろう。

だが、授業をするたびに数多くの生徒から生き生きとした質問が飛んできた。生徒たちの興味・関心の高さが際立っていたことが忘れられない。

 

筆者を招いていただいた当時の校長先生は、環境破壊につながるブラックバスについて生徒と一緒に研究し、その成果で第51回(2007年)日本学生科学賞の文部科学大臣賞まで受賞されたのだ。

その後、周囲の沼の生態系は改善され、昔の状態に近づいてきているという(秋田県については後半でも取り上げる)

まずは試行錯誤

2006年に訪れた静岡市立清水有度第一小学校の美術の校長先生は、美術の世界にととまらず、確固たる教育方針をもっておられた(校長先生はその後、清水船越小学校に異動されたが、筆者はそちらにも出前授業に呼んでいただいたことを思い出す)

「『やり方』を教える前に、試行錯誤をしっかりさせるべき」という方針である。

この「まず試行錯誤」という教育の意義を、筆者もこの校長先生のもとでの出前授業で実感することができた。

生徒たちには、自分自身で試行錯誤しながら工夫して考える態度がしっかり身に付いていた。そのうえで学力も高くなっていったのである。

そんな生徒の1人から筆者に寄せて紙に書かれた質問で、今も忘れられないものがある。