ルーフェンゴサウルスの再現図 Photo by Getty Images

最古にして最新? 続々と新事実が見つかる「最初の中国恐竜」の凄み

「恐竜大陸をゆく」夏の特別編
恐竜の夏、到来! ですが、夏は戦争の記憶と結びついた季節でもあります。安田峰俊氏の好評連載「恐竜大陸をゆく」では、戦争ゆえに大陸で筆頭の恐竜となった「ルーフェンゴサウルス」のスゴさを語り倒します。

アパトサウルス(ブロントサウルス)やブラキオサウルス、ディプロドクスなどに代表される竜脚類は、恐竜のなかでも人気が高いグループである。

竜脚類は、スーパーサウルスのように体長30メートルを超える種も見られた史上最大の陸上生物だ。ジュラ紀前期から白亜紀最末期まで1億数千万年にわたり繁栄を続け、なかには恐竜の絶滅後とされる新生代初期まで生存した可能性が唱えられた種(アラモサウルス)までいる。まさに恐竜のロマンを体現するようなグループと言っていい。

しかしいっぽう、同じ竜脚形類に属している竜脚類と近縁な恐竜──。すなわち原竜脚類(Prosauropoda)、昔の図鑑では「古竜脚類」と呼ばれていたグループについては、世間の人気はいまいちである。プラテオサウルスやマッソスポンディルスなどが属する仲間だ。

マイナーな種類なのに「中国ではメジャー」

そもそも、原竜脚類の最盛期は三畳紀後期からジュラ紀前期ごろであり、恐竜が地上の王者になってほどない時期だ。化石の出土数が相対的に少ないこともあって、一般ではマイナーなイメージを持たれがちな時期である。

原竜脚類はこの時代では最大級の生物だったが、多くの種の体長は10メートルにとどまる。かっこいいツノやトサカが生えていたわけでもなければ、獰猛なハンターだったわけでもない(原竜脚類の多くは雑食か草食だったとみられている)。

彼らは恐竜の進化を考えるうえでは学術的に重要なグループだ。だが、残念ながらルックスや生態の面では、研究者はさておき一般人からのウケはあまり期待できない恐竜の仲間なのである。

ところが中国恐竜の世界では、この原竜脚類の恐竜が長年にわたりトップクラスの知名度を誇っている。

その名はルーフェンゴサウルス(禄豊龍:Lufengosaurus)だ。

中国でそれなりに歴史がある恐竜博物館に行くと、高確率で彼らの全身骨格に出会うことができる。

ルーフェンゴサウルス北京の中国古動物館に展示されているルーフェンゴサウルスの全身骨格(2018年10月安田撮影)

1958年に中国で最初の恐竜シリーズ切手が発行された際には、トップバッターに選出されたこともある。堂々たるメジャー恐竜なのだ。

その理由は、彼らが中国国内で発見された時期と出土数の多さにある。加えてルーフェンゴサウルスの研究史の背後には、8年間に及ぶ日中両国の熾烈な戦争の歴史が横たわっているのである。

戦前に辺境で見つかった恐竜

ルーフェンゴサウルスは体長5〜6メートル、体高2メートル程度の原竜脚類である。

当初は三畳紀後期の地層から出たと思われていたが、後に約1億9000万年前のジュラ紀前期へと訂正された。比較的長い首と長い尾を持ち、頭部は非常に小さい。

やや短い前肢には5本の指があり、特に親指のツメが大きい。

ルーフェンゴサウルスルーフェンゴサウルスの「手」にあたる部分 Photo by Star Tribune / Getty Images

後の時代の竜脚類と違い、前肢の構造からおそらく二足歩行をしていたと見られている。食性は雑食もしくは草食だ。