「せっかく本を読んでも、読んでいるそばから内容を忘れてしまう。覚えているのは、おもしろかったか、つまらなかったか、だけ。ときどき、自分は何のために本を読んでいるのか、わからなくなることがある。記憶力が悪すぎるのかなぁ」
ふと、あなたは本を読んでいてそんなふうに感じることがないでしょうか。
それでも読書好きの人は、「本を読んで得た知識や情報は記憶として、無意識のうちに脳に蓄積されていて、いつか、どこかで役立つに違いない」と思いたいかもしれません。でないと読書という行為自体にむなしさを覚えることになりますから。
冷たいようですが、それはあやしい。たしかに本で読んだことがひょんな場面で有形無形に生きることがないわけではありません。ただ基本的に、「忘れちゃったものは、やはり記憶から消えてしまう運命にある」と、私は思うのです。
とはいえ、あなたは「自分の記憶力が悪いんだ」などと、落ち込むことはありません。「一度学んだことを簡単に忘れる」のは、人間の得意ワザと言ってもいいほどです。
あなたはドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発表した「エビングハウスの忘却曲線」というものを知っていますか?
これは人が何かを学んだとき、時間が経つにつれてどのくらい忘れるかを数値化したもの。20分後に42%、1時間後に56%、9時間後に65%、1日後に66%、2日後に73%、6日後に75%、31日後に79%忘れることが示されています。
ただし、この実験は「子音・母音・子音」から成る無意味な音節を覚えたときの記憶のデータ。意味のある音節なら、もう少し長く覚えていられそうですが、どのみち「忘れる」という意味では大差ないでしょう。
大事なのは、本を読んで何かを学んだら、「へぇ」で終わらせないよう心がけること。たとえば内容を誰かに伝えるという形でアウトプットし、復習効果により記憶に定着させる。どういう形にせよ、アウトプットを意識して本を読むことがポイントです。