よく、「言った」「言わない」という争いがあるよね。「オレは言ったはずだぞ」と凄む上司もいるだろう。言えばそこで行為が完了していると思っている。
でも、重要なのは、言ったかどうかではなくて、相手に伝わったかどうか、なんだよね。だから、相手に伝わるような言い方をしなければならないんだ。それには、大きく分けて3つの視点がある。
「メラビアンの法則」は知っているよね。おそらく、新入社員研修のときにお辞儀や名刺の渡し方がなぜ大切か、という根拠として講師の先生が話したんじゃないかな?
これは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のアルバート・メラビアン教授が、コミュニケーションにおいて、人は相手の話を何によって評価しているかを調査し、その結果、3つの要素のそれぞれの占める割合を明らかにしたものだ。
・言語情報:言葉そのものの意味 7%
・聴覚情報:声の質、速さ、大きさ、口調など 38%
・視覚情報:見た目、姿勢、表情、視線、しぐさ(ジェスチャー)など 55%
すなわち、コミュニケーションにおいて受け手は非言語情報に大きな影響を受けるということだ。
だから、どんなにいい内容のことを言っていても、たとえば、声がくぐもっていて、自信がなさそうにしていたら、相手にはまったく評価されないということになる。これは、会議での発言やお客さんへの提案を思い浮かべてもらえば容易に想像できるだろう。
日本では、企業のトップでメディアや公的な場での発言に対して周到に準備する人はそこまで多くないが、アメリカ企業のトップは、業績発表の記者会見など、中身は当然だが、どのような口調で、表情で、視線で、身振りで話をするのかを専任のコーチがついて何度も何度も練習をして臨んでいる。
何か事件が起こったときの危機対応に関してもまったく同様だ。無防備にマスコミの前に出たりはしない。
あるいは、アメリカの大統領選挙を思い浮かべてもらいたい。もちろん政策そのものについての論点はあるが、それよりもTV討論会で、そしてYouTubeで、どれだけ、はつらつと自信をもって話しているか、そして見た目も信頼に足るかどうか、そういうことで有権者・世論は大きな影響を受けるのだ。
歴代の大統領候補者が、赤いネクタイをするのもそういう理由だ。
故J・F・ケネディ大統領が、リチャード・ニクソン候補に勝利した理由として、当時普及しだしたTVによって広まった若さとイケメンぶりが多大な効果をもたらしたといわれているくらいだ。
練習方法としては、ビデオに撮って自分でチェックすること、自分のプレゼンを同僚・知人に見てもらい、アドバイスをもらうことが有効だ。もちろん、プロに見てもらえるならそれに越したことはない。