筆者撮影

香港デモで「正義の香港市民」に暴行されかけて抱いた悲しみと違和感

「正義」とは何なのか?

大好きだった香港が…

筆者は6月9日付で「現代ビジネス」に、天安門事件30周年に際して「私が目撃した『天安門事件』あの日、中国の若者に訊ねられたこと」という記事を寄稿しました。

掲載から3日後の6月12日、香港の立法府周辺で「逃亡犯条例」改正に抗議するデモが発生しました。このとき筆者は全く別の目的(本来の自分の仕事である野生生物の観察)で、香港を経由して中国本土を訪ねる予定でいたのですが、ちょうどその日、香港でデモ隊と警察の衝突があったことを知ったのです。

情報によれば、6月16日に本番の大規模デモがあるらしいーーそこで、中国奥地での野生生物の調査は数日ずらし、香港に数日滞在して、ゆっくりと取材してみようと考えました。

 

筆者には、今回の香港でのデモが「第二の天安門事件」になってしまうのではないか、という一抹の危惧がありました。といってもおそらく、大半の人が考えるのとは正反対の意味で……です。

筆者は1988年に中国・重慶の大学に留学して以来、およそ30年間にわたり、香港を中継点として日本と中国を行き来してきました。1989年の天安門事件の後に一時帰国し、その秋口から中国行きを再開したのですが、以降今に至るまで、それまで上海イン・アウトだった中継地点を香港イン・アウトに変更しました。四川省や雲南省の奥地に向かうためには、香港起点のほうが何かと便利だったからです。

ざっと数えてみると、560回ほど繰り返してきた香港/中国(深圳羅湖)の国境通過は、筆者にとっては本来の目的(中国奥地での調査活動)遂行のための手続きの一つにすぎず、ほとんど意味を持たない時間です。でも、これだけ永い年月往来を繰り返していると、人間社会に対する興味も知識もない筆者といえども、香港と中国の様々な意味での「違い」を、否応なしに感じてきたのも確かです。

筆者は、香港大好き人間でした(過去形にしていいのか、現在形に留めておくべきか、迷うところなのですが)。四川や雲南の山中での過酷な調査を終え、広州駅で出入国手続きをし、香港行き直通列車に乗った瞬間、「生きて帰ってきた」という想いに、いつもなったものです。

ちなみに広州から香港への直通列車については、昨年以来、「直通列車が香港中心部(九龍)まで延びたことから、香港の主権に悪影響が……」といった報道が見受けられ、国外のメディアでも反対運動などが紹介されたりしています(この7月にも反対デモが行われました)。

しかし広州-香港の直通列車は、30年前から存在していました。現実的には、切符売り場やプラットホームの場所、レールや使用車両などが変更されただけです。

ともかく筆者は香港経由で何百回と日中を往復している、基本「香港大好き人間」なのですが、いつの頃からか、その想いが変わり始めました。最近、むしろ香港にいる間はうんざり、深圳に出るとホッとするのです。いったい何故なのか、自分でも不思議です。