〈マジ地獄…〉「AI歌人」が詠む短歌、驚きのお手並み拝見

5文字入れれば自動で詠む「デモ」付き
短歌研究編集部

いよいよ「AI短歌」を鑑賞

編集部 ではここでAIが作った歌を見ていきましょう。作り方は、まず「初句」を人間が指定して、そのあと、AIが歌の形にしていくというものです。3月にイベントをやった時に、会場にいらした皆さんに初句を入れていただきました。一首めはそのときの歌です。

合コンに心はたのしむ春に泣くみどり児抱きて見する紅梅

編集部 これは「合コンに」という言葉に続けて歌を作ったものです。……シングルマザーが子連れで合コンに参加して……って歌でしょうか(笑)。

加古 そうも解釈できますが、合コンで自分は楽しんでいるんだけど、一緒に連れていった赤ちゃんが泣きやまないので紅梅を見せている、あやしている、とも読めますね。二句切れなんです(笑)。

 

編集部 では二首め。先ほど話に出た「色」のバリエーションの話から連想して、「コスモス」と入れてみました。四字ですが。

コスモストイレ女房わが指に白刃の如くあとかたもなし

編集部 これは、なんかおもしろい、意外な展開をする歌ですね。どういう発想なんでしょう。

中辻 どうなんでしょう(笑)。というのは、AIのディープラーニングは非常に複雑で、いわゆる「ブラックボックス」なんです。われわれも、AIがどのような「考え」で歌を作っているのか、わからない。どのように学習したことを活かしているのか、ある程度は論理的に論ずることはできますが、最終的にAIが歌を作るプロセスは、われわれには見えないところ、解明できてない部分もあります。

加古 「恋するAI歌人」は元のデータがなければ句を作ることができない。しかしディープラーニングを経て、「ブラックボックス」の中で、意外性のある歌が生み出されている……そういうことですね。元のデータが多ければ多いほど、意外性が生まれる率が高まるのでしょうか。

中辻 それはあり得ると思います。ブレンドされるものが多ければ、ブレンド具合によってより意外性は高まると思います。

加古 だとすると、AIはもっと意外性を生む短歌を作る可能性があるわけだ。人間が作る歌の背景にはさまざまな経験や知識が蓄積されています。AIもそういう育て方をすれば、より優れた「作品」が生まれると思うのですが。

中辻 確かに、バックグラウンドをデータとして入力するとより創造性が高まると思います。たとえば、岡本かの子がさまざまな人生経験を積み、その時系列を経てこの句を作った……というデータが大量にあればいいんですが。

野口 現段階では、言葉の表面的な解釈しかできないような印象です。たとえば、原阿佐緒の「春はよし恋しきひとのかたはらによきことかたりほほゑめるごと」は「春はいい、恋しい人のかたわらで、いいことを語りながら微笑んでいる」と、たいへんポジティブな歌に読めますが、阿佐緒の壮絶な恋愛スキャンダルを知っている人が読むと、「よきこと」とは100%のよいことではない、無常で儚いものだということが分かります。しかしAIが読み込むと「春はいいな、恋しい人のかたわらで微笑んでいる」としか解釈しません。

加古 まだまだ解釈が浅いですね。

野口 岡本かの子の「桜ばないのち一ぱい咲くからに生命をかけてわが眺めたり」は、文脈としてはスムーズで「桜が頑張っているから私も頑張ろう」という歌です。でも、これは岡本かの子の「桜百首」の一つであることを踏まえると、「桜ばながいっぱい咲くから、命をかけて眺める」ことが、いかに恐ろしいかが窺えます。でも「恋するAI歌人」ではそこまで深く読み取ることができません。それがAIの短歌と人間が作る短歌の違いではないでしょうか。