〈マジ地獄…〉「AI歌人」が詠む短歌、驚きのお手並み拝見

5文字入れれば自動で詠む「デモ」付き
短歌研究編集部

中辻 今年放映された連続テレビドラマ(日本テレビ『家売るオンナ」)とNTTレゾナントが協力して、ドラマのキャラクターと会話(グループチャット)ができるサービス(『AI家売るオンナ」)を提供しました。LINE上でユーザーが話しかけると、ドラマの主人公をはじめとした最大六名の登場人物が、各キャラクターの設定を活かした回答をし、ドラマのキャラクターとのグループチャットを楽しめるようにしました。「AI家売るオンナ」は国内初のテレビドラマ連動型グループAI会話サービスで、ユーザー数は12万人を突破しました。

そうしたユーザー発話と複数のキャラクター応答を組み合わせて会話にする技術を応用したのが「恋するAI歌人」です。

編集部 コーチの野口あや子さんは、どのようにAIに短歌を教えていったのですか。また、加古さんにもいろいろ質問していただきます。

野口 私がチームに参加したきっかけはNHKの、AIの最新技術を紹介する番組に私が出演し、そこで中辻さんとお会いしたことでした。私が出演した回は「恋愛」がテーマで、番組内では恋愛相談AIオシエルを実際に使ってみました。その流れでAIに短歌を作らせてみよう、という今回の試みに発展していったのです。

まずは短歌を作るにあたりテーマを「恋愛」としました。恋愛は普遍的であり、人の心を描き、その言葉は人の心に直接響きますし。

 

近代女性歌人を「ディープラーニング」

編集部 具体的には、どんな歌を教えたんですか。

野口 今回は与謝野晶子、岡本かの子、柳原白蓮、九条武子、原阿佐緒ら5人の近代女性歌人の作品をデータ化しAIに読み込ませました。とはいえ、何をAIに覚えさせるか、選歌はとても難しかったです。たとえば原阿佐緒は単語が軽いけれど、感情的な表現には屈折があります。いっぽう、与謝野晶子は女性の身の回りのアイテムがいっぱい出てくるのと、理知的でデザイン的な作り方をしているのでAIに活かせるんじゃないかと思いました。

AIに読み込ませた歌集は、白蓮の『踏絵』、『幻の華』、九条武子の『歌集と優曇華』、与謝野晶子の『定本与謝野晶子全集(第一巻)』(『みだれ髪』『恋衣』『小扇』『毒草』『舞姫』『夢之華』『常夏』『佐保姫』)、岡本かの子の『浴身』、『かろきねたみ』、原阿佐緒の『涙痕』、これらの歌集を丸ごと全部、そして私の著作『眠れる海』(書肆侃侃房)以降の500首をデータ化しました。

さらに、それぞれの歌を「初句」「第二句」「第三句」……と分解しエクセルのデータにします。その全データをミックスしAIに学習させます。「恋するAI歌人」のキャラクターは、5人の近代女性歌人の特色をミックスし、ブレンドして出来上がったのです。

中辻 短歌データとしては5000首ぐらいしかありませんでした。これは学習データとしては少なすぎるので、それを人工データとして膨らませました。

その中の一つが「色」のデータです。赤、青、緑、紫などの色をイメージさせる言葉、単語を分類しますたとえば「苔」という言葉が出てくるとAIは「苔」を、「緑」に分類します。おなじ「緑」に分類される「草」という言葉と、使い分けたりするんです。そうやって、色調の似たものを人工データとして生み出します。いろんな人の歌のデータをブレンドすることで精度が高まっていきます。

加古 たとえば「桜」という言葉が出てきたら、それをイメージする「ピンク」と同調する「コスモス」に置き替えたりするんですか。

中辻 バリエーションを増やしていきます。

加古 興味ふかいのは、単語を一つずつデータ化しなくても、ある程度は自動的に連想できるようになっているということですね。言語を覚えていく過程をみるようで、ひじょうに面白く感じます。言葉の幅を拡げていったのは「色」だけですか。

中辻 まずは、そうです。

野口 さらに近代歌集で使われる言葉を、現代の言葉に置き替える作業もしました。たとえば「帯」を「ベルト」にするとか、「紅」を「リップ」にするとか、そういう翻訳のような作業もしています。