〈マジ地獄…〉「AI歌人」が詠む短歌、驚きのお手並み拝見

5文字入れれば自動で詠む「デモ」付き

世界中で多くの人々が注目しているAI(人工知能)について、この二年ほど、短歌界では「AIに短歌は作れるのか」という議論が行われている。

将棋につづき囲碁でも、トップ棋士が負ける局面が出ているなか、「AIが作る短歌が、人間が作る短歌に勝つ時代が来るのか」という「懸念」まで出始めた。「本人(AI)」がいないところで議論をするよりも、実際にどれだけの「歌力」があるのか、AIがつくった短歌をみてみよう。

 

「恋愛アドバイス」で短歌を作る

編集部 座談会に出席していただいたのは、「歌人AI(通称=恋するAI歌人)」の開発を進めた企業、NTTレゾナントから、AI担当課長・情報学博士の中辻真さんと、AI担当社員・奥井颯平さん。そして、AIに短歌を教えるコーチ役の歌人として開発に関わってきた野口あや子さん。さらに、歌人であり東京新聞の編集局次長をつとめる加古陽さんです。

左からNTTレゾナント中辻氏・奥井氏、歌人の野口氏、加古氏

では具体的にAIがどのように短歌を学んでいるのかを、中辻さんと奥井さんにご説明いただきます。

中辻 われわれは2016年からAIを活用した、さまざまな活動の幅を広げてきました。「人に寄り添うキャラクターAI」を目指し、人の創造的な活動を、AIとの対話を通じて支援したいという理念で開発を続けています。

従来のAIは「FAQ(Frequently Asked Questions)応答型」が主流です。情報の読み上げやルールベースの応答が多いのですが、われわれが開発するAIはユーザーと、よりワクワクするような会話を続けることができる……たとえば予想外の応答を楽しんだり、育成する楽しみを味わってもらうために、ディープラーニング(深層学習)を用いて、長文回答生成などの新技術の確立に取り組んでいます。

その一例がユーザーの恋愛相談にAIが長文でアドバイスをする世界初の試み「恋愛相談AIオシエル」や、今回の「恋するAI歌人」です。

編集部 なるほど、まずは恋愛相談の「経験」から始めたのですか。

中辻 短歌のお話をする前に、「オシエル」のお話をするとわかりやすいと思います。

2019年6月現在までに、オシエルは約32000件の恋愛相談に答えており、高い評価を得ています。

ディープラーニングは人間の脳の動きを模していて、情報(文脈)を抽象的に捉え、疑問に合った応答を、数ある文脈の中から選択して答えています。

QA(Question Answering)には二タイプあります。一つは「Factoid」といって、比較的短文での単純なQAです。たとえば「富士山の高さは何メートル?」といった回答が一義の疑問に答えます。もう一つのQAは「Non-Factoid」といって、答えが多様、複雑で回答が長文となります。オシエルの恋愛相談は後者のタイプになります。オシエルは既存の回答を引き出してきて伝えるのではなく、「教えて!goo」の3000万件以上のQAデータを元に作られた回答モデルから、ユーザーの質問の文脈に合う回答を「共感」「結論」「理由」「励まし」の構成からなる長文で返します。

そのため、「質問の文章ベクトル」、「結論の文章ベクトル」「理由の文章ベクトル」の三つのベクトルを計算します。そのうえで、「質問」と「結論」のマッチングと、「質問」と「理由」のマッチング、および「結論」と「理由」の組合せの最適化を、ディープラーニングを用いて実施します。これにより、質問に対して理由付けされた結論を文章化して返答することができるようになります。

編集部 それで相談に沿った文脈で答えるというわけですね。

中辻 「教えて!goo」のオシエルは、長文の「質問」の文脈を時系列ディープラーニングを用いて把握した上で「結論」と「理由」の流れを計算できます。さらに、このオシエルを対話型にしたバージョンも提供しています。対話型のオシエルはユーザーとAIの対話応答のセッションを経て会話を記憶します。それにより、セッション内でユーザー理解を「パーソナライズ」し、その人向けの回答をします。

たとえばユーザーが「好きな人ができました」とオシエルに話しかけると「相手はどんな人ですか?」とオシエルが聞きます。ユーザーが「とても優しい人でよく話しかけてくれます」と答えるとオシエルは「アタックしてみましょう」と答えます。反対にユーザーが「相手はたんぱくな人です。もしかして嫌われたかも……」と答えるとオシエルは「少し様子を見ましょう」と答えます。

AIは人間の脳の動きを数学的に処理します。つまり、人間の脳の動きを機械で再現するための手法を開発し、それをどんどんアップデートしているのです。