# 介護

親のためにやる「同居介護」が、じつは親孝行にはならない3つの理由

馴染めると思った私が悪かった
太田 差惠子 プロフィール

土下座する母親

タクヤさんは、母親に対して、「習い事でも始めたら?」と提案。駅前のカルチャーセンターの案内書をもらってきて、母親に渡したりもしたそうです。

週末は、それまで夫婦で出かけていた買い物にも誘うようにしました。

けれども、それから3か月が過ぎたころ、母親が切羽詰まった顔でタクヤさんに言いました。

「帰りたい。九州に帰りたい」

 

タクヤさんは、「ついに、来る時がきた」という思いもありました。が、一方で腹立たしい気持ちにもなり、つい声を荒げてしまいました。

「ワガママを言うなよ。帰りたいって、もう家はないし、どうしようもないじゃないか」

母親は押し黙りましたが、翌日の夜、仕事を終えて自宅に戻ろうとしたところ、妻から電話が……。

「お母さんがいない。『帰ります』って、置手紙があるわ」と。

〔photo〕iStock

母親は元の実家近所の親戚の家にいました。タクヤさんは迎えに行きましたが、母親は頑として動きません。母親は正座し、土下座をするような姿勢で頭を下げて言いました。

「せっかく呼んでくれたのに、ごめんなさい。馴染めると思った私が悪かったの。どうしてもこちらに戻りたい。迷惑はかけないので許してください」と……。

タクヤさんには返す言葉が見つかりませんでした。