アベノミクスの6年間で、日本と中国の格差はさらに拡大した

先端分野では、もはや及ぶべくもなく…
野口 悠紀雄 プロフィール

フィンテックで中国が世界を制覇

中国のフィンテック企業がいま何をやっているのかを見ておこう。

電子マネーは、中国で広く普及している。2大サービスは、アント・フィナンシャルが運営する「アリペイ(支付宝)」と、テンセント(騰訊控股)が提供する「ウイーチャットペイ(微信支付)」だ。

ほとんどゼロのコストで送金できる。誰でも、どんな店舗でも、特別な装置や審査なしで利用できる。アリペイとウイーチャットペイの利用者は、それぞれ10億人近くになっている。電子マネー取引額は約150兆円といわれる。約5兆円の日本と比べると、30倍以上もの差がある。

 

アリペイは、各国の企業と提携して、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど34か国以上に進出している。国外利用者は約2・5億人いるといわれる。

日本の店舗でも、登録すればアリペイを利用することができる。実際、来日中国人客のために日本でも導入する店舗が増えている。オリンピックを機会に、日本でアリペイを受け入れる店舗は、急速に増えるだろう。

日本では、ようやくQRコード決済が始まろうとしているところだ。一方、アリペイは2017年9月、顔認証だけで支払いができる新決済システム「スマイル・トゥ・ペイ」を導入した。これが広がれば、決済にスマートフォンさえ必要なくなる。

また、アリババの子会社、蚂蚁金服(アント・フィナンシャル)のグループ会社は、2015年1月に「芝麻(ゴマ)信用」を始めた。これは、様々な指標の組み合わせで信用度を計算し評価するものだ。

これを活用したビジネスコンサルティングなどの業務も行なっている。芝麻信用のスコアだけを用いて無担保融資をする業者も出てきてる。

保険の分野でも新しい試みがある。

衆安保険は、糖尿病患者を対象とした医療保険を提供している。テンセントが開発したタッチパネル式の測定端末で血糖値のデータを取り、血糖値が規定値を下回れば、保険金が増額されるようになっている。

中国が「一帯一路構想」によって、東南アジアからヨーロッパに至る地域において経済的覇権を握ろうとしていることは、しばしば報道される。

しかし、こうした政策だけではなく、金融インフラの面においても、中国が世界的な規模で指導権を握ろうとしているのだ。