知的に見えて実は幼稚…夫の「静かなモラハラ」に気づかぬ女性の悲劇

実はあなたも被害にあってるかも…
谷本 惠美 プロフィール

「あなたはおかしい」

被害者は、冷静になることができれば、その決定は自分の決定ではなく誘導されてのものだとわかるかもしれません。しかし、モラハラパーソナリティとの関係の圏内では、最終的には自分がOKを出したことに変わりはないのだ、自分の決定だ、と自分への反省だけを深めます。

そして、安心できるはずの家庭であったはずの場所が、被害者の意志や価値観が全く反映されない、自分自身の存在しない場所となっていくのです。

こうしたモラハラ環境の中で、被害者は、これまで生きてきた中で育んできた「人としての存在意義」「ここにいてもいいという感覚」の一切を削ぎ落とされていきます。

しかし、静かなモラルハラスメントにおいて、被害者はその自分の変化、心のダメージに一切気づくことなく、それを深めていきます

「ほかの人に比べたら、私の場合たいしたことないのかも」と被害者に言わしめる所以です。

モラルハラスメントを受けることの何が怖いかというと、人格や価値観、思考を攻撃され、自分がなくなってしまうということです。自分がもともとない人であれば、心にダメージを受けることもないのかもしれませんが、不思議と、モラハラパーソナリティはそういう人を選びません。

〔PHOTO〕iStock

魅力的で自分の意思をしっかり持ち、この人を自分の世界に引き入れたいという人を選ぶので、人を見る目があるのだなあといつも感心させられます。

憧れて、やっと親密になり、自分の世界に招き入れた相手を、自分の世界で自分のために使うことをし始める――。自分をしっかりもった人たちは、モラハラを受け、自分を知らず知らずに削ぎ落とされズタボロになっても心の奥底には自分自身の欠片がちゃんと存在し、生きたいと悲鳴を上げ続ける。なんだか辛い、と。

その理由がわからないままにうつ状態になったりするわけですが、モラハラパーソナリティはそんな被害者をとことん責めます。「あなたはおかしい。あなたは弱い人間だ」と。自分がそんな風にしてしまったにもかかわらず。

 

モラハラという言葉が広まった今こそ、「静かなモラルハラスメント」の存在をもっと知ってほしいと思います。

繰り返しになりますが、彼れらの言葉はとても丁寧で、言われた側は知的にさえ感じることがある。

被害者は、自分のために言ってくれている、互いの関係性を良くするために他の人が言いにくいことを言ってくれているのだと、相手の言葉を一生懸命理解し、受け止めようとする。相手とキャッチボールをして理解を深めようと努める。