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SNSに夢を抱く人たちが陥る「書きたいけど、書くことがない」問題

有名になりたい。そんなあなたへ

コピーライター・CMプランナーとして24年勤務した電通を2016年に退職し、以来、「青年失業家」として活動する田中泰延さん。会社員時代に始めた映画コラム(『田中泰延のエンタメ新党』)はカルト的人気を誇り、200万PVを超える人気連載になった。

その田中さんの初の書著『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)が6月に刊行され、発売1ヵ月ほどで6万部突破という好調な売れ行きを見せている。

田中さんの元には、「書きたくなった」という感想が多く寄せられているという。だが、この本は、いわゆる文章テクニックを教える本ではない。人生指南書とも、就職・転職活動のアドバイスとも、笑いあり涙ありのエッセイとも読める。「役に立つと思って読んだら、なんだポエムじゃないか、と怒られたこともあります」と田中さんは笑う。

なぜ異色の文章読本が売れているのか。

(取材・文/砂田明子)

 

「書いて褒められる自分になりたい」

──電通を辞めて2年半、初の著書は「書くこと」がテーマとなりました。

田中:「書きたい」と思っている人が、今の世の中、とにかく多いんです。ライターゼミの講師をすると、それはもう、大勢集まってきてくれます。ただ、その中に、「書きたいけど、書くことがない」という人もけっこういるんですね。

撮影/浜村達也

書きたい人が増えているのは、ブログやTwitter、noteなど、書く環境が整っていることも要因の一つですが、もう一つは、「書いて褒められる自分になりたいから」です。ライターやエッセイスト、インフルエンサー、芥川賞作家……になりたいから、書きたい。「やりたいこと」と「なりたい自分」を混同している人が多い。書くことは、100mを9秒台で走るとか、160キロでボールを投げるとかいった能力と違って、自分にもできるかもしれないと思われがちなのでしょう。

そういう人の夢と希望をぶち壊すために、僕はこの本を書きました(笑)。というのは半分冗談ですが、半分は本気で、書いて褒められる、書いてお金がもらえるというのは「結果」です。結果は他人が決めること。この本で僕が伝えたかったのは、文章は自分のために書くものだということです。だから、書きたいことがない人は、書かなくていい。

画像提供/ダイヤモンド社