食のファッション化、食卓の変化

平成の食トレンドで代表的なものを考えてみると、女性主導のものは目新しく、男性主導のものはリバイバルが目立つ。ティラミスやタピオカミルクティーは、今まで食べたことがない味、食感に特徴がある。

対して、ご当地グルメやナポリタンは、昭和の時代にも親しまれていた。もちろん、女性の中にも昔ながらの味が好きな人もいるだろうし、男性にも目新しい味に目がない人もいるだろう。

しかし、女性が目新しいものを好む傾向は、昭和の時代にも表れていた。それは家庭料理の分野である。

昭和の時代、家庭の食卓には目新しい料理がどんどんのぼるようになっていた。

ナポリタンも、ハンバーグ、オムライス、コロッケ、ギョウザ、春巻き、麻婆豆腐などの定番料理も、昭和半ばまで庶民の日常食ではなかった。

それらの料理が家庭で食べられるようになったのはもちろん、食材が豊富になり、台所が近代化されたなど、環境が整備されたからだ。

しかし、それだけでなく、テレビの料理番組や主婦雑誌などから情報を得た主婦たちが、目新しい料理を次々と試したことが大きかった。

昭和半ばに主婦になった女性たちの大半は、農山村から都会に出て来た人や、戦中戦後の食糧難の都会で育った人たちで、子供の頃から洋食を食べ慣れていた人はほとんどいない。

主婦たちが、テレビや雑誌で紹介される目新しい料理を次々と取り入れたからこそ、ナポリタンは平成時代に懐かしがられる料理になったのである。

つまり、女性たちが新しさを恐れず挑戦してきた結果が、食のファッション化であり、食卓の変化である。

もちろん、食が洋風化したことを憂える声はある。総務省の家計調査によると、コメなど、味噌、醤油、サトイモなど和食の定番食材の消費金額はどんどん低下している。味噌汁を毎日食べないどころか、コメのご飯を毎日食べない人もいる。

和の食材に対する依存率が下がったのは、食が多様化した結果である。

しかしそもそも高度成長期には、不足気味だったたんぱく質や脂質を摂ることが奨励されていた。それらの栄養源が豊富に含まれている料理は当時、洋食や中華だった。

従来の和食には、肉類があまり使われていない。そして、油脂を使う料理も限られていた。バランスのよい食生活をするために、食の多様化は推進されたのである。