かんぽ生命の不正販売は「中途半端な民営化」がすべての原因だ

根本的に議論をするときが来た
加谷 珪一 プロフィール

突出した規模を持つかんぽ生命ががん保険に乗り出してしまうと、アフラックの収益が脅かされる危険があり、米国政府はかんぽ生命の業容拡大に懸念を示してきた。このためかんぽ生命は、アフラックとの競合商品をあえて投入してこなかったという経緯がある。

かんぽ生命とアフラックで商品の棲み分けが出来ているとはいえ、かんぽ生命が独自に上場し、親会社として日本郵政が二重に上場しているという図式において、さらにアフラックをグループ会社にするというのは、ガバナンス上、好ましくないのは言うまでもないだろう。

今回の不正販売を受けて日本郵政グループは保険営業を当面、自粛する方針を固めたが、アフラックの商品については引き続き販売を継続する意向だという。一部からは、無理な販売の対象となる商品が、かんぽ生命からアフラックにシフトするだけだというシニカルな声も聞こえてくる。

いずれにせよ、何らかの商品販売手数料がないと収益を確保できないという日本郵便の基本構造は変わっていない。このため、無理な販売をやめれば業績悪化を招く可能性があり、逆に販売手法の見直しが進まなければ、同じようなトラブルが再度、発生するリスクがある。

 

中途半端な民営化と上場がすべての原因

今回のトラブルによって日本郵政グループの株価は大きく下落しており、政府による株式売却シナリオも狂い始めている。結局のところ、一連の問題は、公共事業としての性格を残しながら、中途半端な状況で民営化と上場を進めたことがすべての原因といってよい。

郵政民営化は小泉政権時代に国論を二分するテーマだったが、最終的に政府が下した結論は、(その決断が正しいものかどうかはともかくとして)完全民営化はしないというものであった。

もし完全民営化を実施しないのであれば、収益を犠牲にしても、公共性を重視すべきなので、株式の上場もあり得ないし、ましてや金融商品を高齢者に無理に販売するなどもってのほかということになる。

一方、完全に民営化するのであれば、ユニバーサルサービスの維持は難しくなるので、過疎地域におけるインフラ対策は別の施策として考えなければならない。

足して二で割るような施策は、成長が続いている昭和の時代であれば、大きな問題にはならなかったが、人口が減少し、経済規模の縮小が見込まれる今の時代においては、時間稼ぎの効果しか得られない。

今回の不正販売をきっかけに、日本郵政グループをどう位置付けるべきなのか、過疎地のインフラをどう維持するのか、もう一度、ゼロから議論をやり直す必要があるだろう。