かんぽ生命の不正販売は「中途半端な民営化」がすべての原因だ

根本的に議論をするときが来た
加谷 珪一 プロフィール

郵便事業は儲からないが、インフラ維持は義務

ここまでは、過酷なノルマによる不正契約の横行という話だが、かんぽ生命の場合には、こうした単純な図式では済まされない事情がある。背景には、日本郵政グループのいびつな事業構造とガバナンスの欠如という根本的な問題があり、今回、不正契約を見直したところで、また別の形で問題が顕在化する可能性が高いからだ。

よく知られているように、日本郵政は2007年の郵政民営化以来、8年を経て2015年に上場を果たした。グループ内には、日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行という事業会社があり、日本郵政はその持ち株会社だが、かんぽ生命、ゆうちょ銀行は独自に上場するという、いびつな構造となっている。

そうなっている理由は、民営化したとはいえ、ユニバーサルサービス(地域によって格差のない公平なサービス提供)が義務付けられた日本郵便の収益制が極めて低いという事情が存在しているからだ。
 
日本郵便は全国で約2万4000カ所の郵便局を運営しているが、同社が扱う郵便物の数は、過去10年で2割以上減っている。しかも、年賀状や暑中見舞いのハガキを送るのは高齢者が多いので、今後も郵便物の量は減っていく可能性が高い。一方で、郵便には書留など重要な役割を持ったサービスも残されており、基本的なインフラは維持しなければならない。

日本郵便における純粋な郵便事業は赤字に転落する期もあり、ゆうパックなどの宅配事業に加え、金融商品の販売といった付帯事業を加えることで何とか業績を維持しているのが実状だ。つまり日本郵政グループ全体にとって、金融商品の販売手数料は極めて重要な意味を持っており、そうであればこそ、郵便局員には過酷なノルマが課されていた

 

競合企業にわざわざ資本参加する理由

手数料を何としても確保したいというグループの焦りは、企業戦略にも大きな影響を与えている。日本郵政は2019年3月、米保険大手アフラック・インコーポレーテッドの株式を7%取得する資本提携契約を締結している。

傘下にかんぽ生命という保険会社を擁していながら、ライバルともいえる企業にわざわざ資本参加するのは、アフラックが得意としているがん保険の販売を強化することで販売手数料を獲得するとともに、アフラックの収益を自社の決算に反映させるためである。

アフラックは日本におけるがん保険のパイオニアであり、現在もがん保険では6割以上のシェアを握っている。一方、かんぽ生命はがん保険を取り扱っていないのだが、これには日米間の特殊な事情が関係している。