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つくばエクスプレス「基地内脱線事故」本当の原因は何だったのか

運営会社の発表に抱いた疑問

今年2月に発生した、つくばエクスプレスの基地内脱線事故。7月12日になってようやく事故の原因が発表された。その内容は、「ブレーキの力が十分でない状態」と「人為的なミス」が重なった、というものだった。首都圏の重要路線を担う、つくばエクスプレスの安全面での不安が改めて浮き彫りになったといえる。

ところが、この発表された事故原因を精査すると、原因の核心は「非常ブレーキの不具合」にあることがわかった。誤解を与えかねない発表をした、運営会社の首都圏新都市鉄道の体質にも疑問が残る。

つくばエクスプレスの脱線事故の原因について、問題点を考えてみたい。

 

本当に「人為的ミス」か?

脱線事故が起きたのは2月28日午後4時10分頃。茨城県つくばみらい市にある「つくばエクスプレス総合基地」で、点検をしていた6両編成の電車が本来の場所で停車せず、線路の先端にある車止めに衝突。先頭車両の車輪が脱線した。

すぐ近くには総合管理所の建物があったが、脱線した電車は先頭車両が支柱に衝突したことで停止。一歩間違えば大事故につながるところだったが、乗車していた社員3人も含めてけが人はいなかった。

運営会社の首都圏新都市鉄道は事故直後、原因については「不明」で、「調査中」としか答えなかった。筆者は、関係者の証言などから、非常ブレーキの異常と人為的なミスが重なった可能性を、『つくばエクスプレス「基地内脱線事故」で生じる安全への懸念』(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63524)で指摘した。この記事を公開したのが3月19日である。

首都圏新都市鉄道は事故から4か月以上が経過した7月12日に、ようやく事故の調査結果を公表した。現在、つくばエクスプレスのホームページでも確認できる。原因については、次のように書かれている。

〈過走防護機能の動作確認試験において、ブレーキ力が十分でない試験車両で、加速操作を行う箇所が通常より線路終端に近い位置で行ったことにより発生しました〉

一読した印象では、「ブレーキ力が十分でない」ものの、主要な原因は人為的なミスだったと受け止めてしまうのではないだろうか。しかし、取材を進めると、むしろ「ブレーキ力が十分でない」という部分に大きな問題があることが分かった。

本来なら衝突しなかった

発表された内容を読み解いてみたい。過走防護機能とは、基地内や終点など線路の先端部分で、所定の位置を越えて走行することがないように、制限速度を超過した場合は自動的に非常ブレーキがかかる装置のこと。いわゆる安全装置だ。

通常の動作確認試験では、電車は20キロ程度で基地内を走り、所定の場所を越えたら手動操作により一旦時速25キロを超えるように加速する。速度が25キロを超えたところで、非常ブレーキがかかるはずだった。

事故が起きた流れは次のようになる。

まず、所定の場所を越えたにもかかわらず、手動で加速するのが遅れた。通常よりも線路の終端部分に近い位置で時速25キロ以上になるように加速したが、作動したブレーキの効きが弱かったために、十分に減速されることなく、車止めに衝突してしまったのである。

ただ、首都園新都市鉄道が発表した内容では、まるで手動で加速した地点が終端に近かったことが、衝突と脱線につながった、と読み取れてしまう。

しかし非常ブレーキは時速25キロ以下であれば19.7メートル、時速20キロであれば12.6メートルで停車が可能で、作動した時点で本来の力があれば、車止めに衝突することはなかった。つまり、非常ブレーキの力が弱かったことが、この脱線事故の最大の原因と言える。