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法改正で「死に方のルール」が変わった…相談急増「4つの変更点」

知らないと、死んでから後悔します

「生前贈与」の罠

どんな人にも、死は等しく訪れる。しかし、後は野となれ山となれ、とはいかない。あなたの死の「後始末」は、誰かが引き受けなければならないからだ。葬儀や墓はもちろん、自宅や財産の処分にいたるまで、その手続きは実に煩雑である。

いま、そのルールが、ひっそりと、しかも大胆に変わりはじめている。

理解があやふやなまま行動すると、遺された人が大変な目に遭う。埼玉県在住の島田恭子氏(仮名・72歳)の話を聞こう。

「この7月に亡くなった夫は、昨年10月、余命を悟って私に自宅を生前贈与しました。財産は自宅と預貯金がわずか。生前贈与された自宅は遺産分割の対象から外れると聞いていましたから、それを見越していたのです」

島田氏の夫は、遺された家族間のもめ事を避けるためにと、妻に自宅を生前贈与した。遺言書にもその旨を書いていたので、何の問題もなく済みそうだったのだが――。

「私たちには子が2人います。そのうちの1人が葬儀の際に『遺産はどうなってるのか』と聞いてきたんです。私は、ほんのちょっとの預貯金しかないわよ、と答えたのですが、自宅はどうなっているのかと言う。

『お父さんから生前贈与を受けているし、遺産分割の対象にならないわよ』と答えたところ、『遺留分は請求できるんだから、その分はもらう』と言い張るのです」(島田氏)

残念ながら島田氏と夫の考えが甘かった。実は、子の発言のほうが法的には正しい。自宅が遺産分割の対象外になっても、遺留分請求の対象にはなるのだ。このまま子の1人が争い続けるなら、島田氏は、自宅を売却するハメになるかもしれない。

 

7月1日の相続法大改正に、慌てふためく人は多い。しかし、新制度に飛びつくと大やけどする。ルールの変更は、相続にかぎらない。

想定していなかった新しい墓じまい、葬儀、お金の遺し方……新しい「死に方のルール」を知っておかないと、上手に逝くことができない時代になったのだ。

いま、全国の司法書士や税理士、弁護士事務所で相談が急増しているのは、「遺された妻」にかかわる相続法の変更点についてである。税理士の岡野雄志氏が言う。

「今回の改正は、配偶者の優遇を打ち出し、被相続人(夫)から配偶者(妻)への相続の対処の仕方が変わります。どの制度を使うかで配偶者が負担する税金も変わるので、何がどう変わるかを踏まえておかないと、大変なことになってしまいます」

ここでは、最も重要な「夫から妻への相続」に関わる四つの変更点について、解説していこう。