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「5Gの世界標準」を中国14億人市場がなし崩し的に形成する可能性

ファーウェイ5Gスマホ発売の意味とは

ファーウェイの5G戦略

8月16日午前10時8分――ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)が、同社として初めての5Gスマートフォン『Mate20X(5G)』を、中国国内で発売する。

7月26日午後4時8分から、実店舗(全国の同社及び家電量販店の旗艦店)とインターネット・ショップ(アリババ、京東、蘇寧など)で予約受付を始めた。「8」は末広がりを意味し、中国人が最も好む数字だ。2008年の北京五輪も、8月8日午後8時8分に開幕式を始めた。

また、9月に折りたたみ式5Gスマートフォン『Mate X』を発売することも、正式に発表した。

7月26日に、中国広東省深圳市にあるファーウェイ本社で記者会見に臨んだ余承東ファーウェイ消費者業務CEOは、次のように述べた。

「すべてをスマート化するファーウェイの戦略は将来、消費者の衣食住に無限のサービスを提供し、産業の進化を推進するだろう。ファーウェイの5Gスマホは、すべてをスマート化する時代に合わせて進化し、多くの機能を搭載し、多彩な商品間を相互に連動させる。5Gスマホは、スマートホームのコントロール・センターに変わるだろう。

われわれはいま、偉大な変革の時代に生きている。ファーウェイのすべてをスマート化する戦略は、イノベーションと科学技術によって、スマート新時代を拓くだろう」

ファーウェイは、「4Gは生活を変えたが、5Gは社会を変える」を合言葉に、「1+8+N」戦略を進めている。

「1」はスマートフォンのことで、すべての5G機能のセンターとなるのはスマホだという考えだ。「8」は、パネル、ウエアラブル、ハードディスク、パソコン、イヤホン、VR(仮想現実)、AIスピーカー、自動車機器で、5G技術が一次的に応用される主な領域だ。そして「N」(ナンバーの意)は、スマートホーム、スマートシティの無数の応用分野を指す。

ファーウェイの5G戦略については先週、出版した新著『ファーウェイと米中5G戦争』(講談社+α新書)に詳述しましたので、どうぞご高覧ください。

SA/NSAの両方式に対応

この日のファーウェイ幹部たちの説明によれば、8月に発売する『Mate20X(5G)』には、携帯電話用の「麒麟(Kirin)980」と5G端末用の「巴龍(Balong)5000」という2種類の7ナノの5G端末チップを組み込んでいる。そしてこれらは、スマホ業界で唯一、SA/NSAの5Gに対応しているという。

5Gの標準システムは、世界各国から移動通信分野の専門家が集まっている国際組織「3GPP」(移動通信システムの規格策定を行う標準化団体)が、2017年12月に策定した。それによると、既存の4Gネットワークを利用して5Gネットワークのサービスを行うNSA(Non-Standalone 非独立)方式と、5Gネットワークを単独で新たに構築するSA(Standalone)方式の2種類を採用することになった。

 

世界には、既存の4Gネットワークがすでにあるのだから、言ってみればそこに帽子をかぶせるようなNSAの方が手っ取り早いし、安上がりだ。そのため、初期の段階ではNSA方式が優先されることになる。ところが5Gが本格化していくと、より高度なシステムが要求されるし、そもそも4Gは不要となるので、SA方式が主流となっていく。

こうした流れの中で、ファーウェイのスマホは、そのどちらの方式にも唯一、対応する優れものだと自賛しているのである。

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7月18日に、イタリアの記者団の取材に応じたファーウェイ創業者の任正非CEOは、5Gのシステムについて質問されて、次のように答えている。

「5Gには現在、2種類の方式があって、一つは4Gと兼用できるNSA方式だ。これを使えば、4Gのスマホを5Gのネット上で使用できる。未来の工業の自動化コントロール機能にまでは至らないが、4Gのものをそのまま使えるというのはメリットだ。

もう一つは、5G単独のSA方式で、実はこちらの方が4Gとの兼用がない分、設備のシステムは比較的単純だ。かつ高速で低遅延を実現できる。イタリアの優秀な医者が、遠く離れた田舎に住む病人の心臓手術を行うこともできる。医者の執刀と画面上の様子が、時差なく行えるからだ。いま行っているようなインタビューも、本当の意味で『生中継』が可能になる。

中国で現在、ファーウェイが行っている5G基地局の設置は、やはり4Gと5Gの混合方式(NSA)だ。なぜなら現時点において、まともな5GのSA方式の基地局を設置できるのは、世界でファーウェイしかないからだ。

中国の標準法の規定によれば、(独占禁止の観点から)3社以上が到達可能になって、初めて許可が下りる。そのため中国では、来年になってようやくSA方式が開始となる。われわれはクアルコムの技術が追いついてくるのを待っているというわけだ」