# 電機

従業員の不信を引きずったパナソニックに復活はあるのか?

幸之助の会社はリストラで疲弊した
大原 浩 プロフィール

パナソニックの不調の原因は中村時代にある

創業の理念を忘れて大海を漂っていた松下(パナソニック)を徹底的に打ちのめしたのが、中村邦夫氏であることは、多くの人々の意見が一致する点である。

「人を大事にする」という創業の理念などきれいさっぱり忘れて、ひたすら血も涙も無いリストラを行った。

その苛烈さは週刊現代2002年7月27日号に掲載された中堅幹部の証言からも明らかである。「君の給料で優秀な若い奴が3人雇えるかな」という言葉を浴びせられるだけでは無く、それでも退職を拒否すると「研修センター」という名のリストラ部屋で草むしりをさせられたという。

このような非道なことが行われたのは当時の中村社長が「45歳以上はいらない」と発言したからだといわれる。しかし、45歳以上がいらないのであれば、40歳、35歳、さらには30歳の社員も「間もなく自分にも同じことが起こる」と考えて当然だ。

また、OBの年金の減額という日本の大企業ではめったに行わないことにまで手を付けた。もちろん、「年金問題」は当サイト7月22日の記事「年金は巨大な『国営ねずみ講』だから、負の所得税に一本化すべきワケ」で述べたように、個人、企業、国家にとって重くのしかかる問題ではあるが、「約束しただけの金額を払わない」という行為は、従業員と企業の間に抜きがたい不信感を生じさせるのは明らかである。

リクルートのような企業は、創業当初から社員が独立して事業を行うのは当然という社風であったし、そのような覇気のある人間を好んで採用した。また、現役時代の給与水準は高いものの、退職金や年金も大したことが無い。

このような企業では、役員や幹部にならずに定年まで勤めることはよしとはされない(最近は大企業になったので、少し変化しているかもしれないが……)。

しかし、中途退社した人々は口々にリクルート時代を懐かしみ、各地に(中途退職者のための)同窓会が有るほどであり、筆者の中学時代の同級生も、関西地区の同窓会の会長を務めていたそうである。

 

もちろん、松下(パナソニック)はリクルートとは全く逆で、冒頭で述べた様に「松下で働きたい人々」が「松下の繁栄のために」身を粉にして働くことで成り立ってきた会社である。

中村氏の行った行為は、そのような誠心誠意松下のために尽くしてきた従業員への背信行為である。

また、2005年から始まった石油ファンヒーターの欠陥・リコール問題の対応は、既存の広告枠をほぼすべて使って、徹底的に告知を行ったので評判が良いが、実は初動の誤りがこのような大事件にしてしまったとも言える。しかも、会社の最高経営責任者として、FF緊急対策市場本部の本部長を務めながらも、中村氏は記者会見などの公的な場所で何の説明も謝罪もしなかった。

その他、中村体制の問題点については、巻末の参考書籍などを参照いただきたいが、筆者が感じるのは、中村氏というのは2014年に沈没事故を起こした韓国のセウォル号の船長のようなものだということである。この船長は、乗客を置き去りにして自分だけ助かろうとした。中村氏も、自身の責任を顧みず、言ってみれば松下を沈没したまま置き去りにした。

つまり、2期連続の赤字の合計が1兆5000億円という巨額に上り、63年ぶりの無配に転じたのだ。しかし、その事実が発表される直前の2012年に退職した中村氏を含む4名の取締役には、合計で18億円もの退職慰労金が支払われた。

関連記事

Pick Up

編集部からのお知らせ!

おすすめの記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/