# 電機

従業員の不信を引きずったパナソニックに復活はあるのか?

幸之助の会社はリストラで疲弊した
大原 浩 プロフィール

幸之助の遺志は継がれたか?

幸之助は、1989年に94歳で亡くなった。戦後の高度経済成長からバブルに至る頂点の最後に亡くなったのは、日本経済の歴史において象徴的だ。その後30年間におよぶ平成の暗い時代を見なくて済んだのは幸いであったかもしれない。

しかし、松下(パナソニック)の衰退は、実は幸之助在任中に始まったのではないかと思う。

PHP研究所の設立は1946年であるが、これは「幸之助の哲学」を事業とともに広げるという大義名分があった。しかし、1979年に松下政経塾を設立した頃には、事業よりも社会活動に情熱が向けられていたように思う。

もちろん、年齢を重ねるごとに我欲よりも「世のため人のため」を優先するようになるのは望ましいことだが、幸之助の場合には「松下電器」という会社が、自分の遺志を継いでくれないのではないかという不安があったから、より普遍的な社会活動に注力したような気もする。

事実、現在のパナソニックには松下家出身の役員はいない。

もちろん、家電業界全体が厳しい状況を経験したのは事実だが、幸之助の遺志がきちんと引き継がれなかったことに、パナソニックが危機に陥った大きな原因の1つがあるように思える。

 

筆者が好きな言葉に「創業の理念は常に正しい」というものがある。どのような企業でも、創業期やその後の苦難を乗り越え現在に至ることができたのは、創業の理念が正しかったからである。

もちろん、環境の変化に対応して企業が変貌を遂げるのは当然だし、むしろそうすべきであろう。ピーター・F・ドラッカーが、企業にとってもっとも大事な二つのこととして取り上げる「マーケティング」と「イノベーション」も、企業が常に変わっていくことを前提にしている。

しかし、現代の家訓ともいうべき「創業の理念」は、未来永劫伝えていくべきものだと思う。企業が常に変化するものであるからこそ、「背骨」を強固にして全体を支えなければならない。そうでなければ、クラゲのようにただ浮遊する存在にしか過ぎない……。

アメーバ経営という言葉もあるが、「創業の理念」という背骨があるからこそ、アメーバのように行動することが価値を生むのだ。

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