ピクニックがてら市場調査を

銀行から住宅購入の融資が受けられることを前提に、人々は自分に合った理想的な物件を探す。フランスでは新聞を定期購読している人は決して多くないし、不動産の宣伝が目白押しの折り込み広告もない。朝刊の間に、新築マンションの分厚い宣伝ビラが挟まっているケースなどありえない。もっとも石造りの古い町並みに、大手建設会社が施工する大規模マンションの建つ余地もないから、売り出し広告などあろうはずはないが。

アパートなり一軒家をいずれは買いたいと思うから、パリっ子は新聞の不動産欄に出ている、売買物件の相場チェックを怠らない。春先からの半年、天気のいい週末には狭苦しいパリを離れ、パリっ子たちは美しい森や湖に抱かれた自然味あふれる郊外に出る。

太陽の下で、用意したサンドイッチやお菓子でピクニックを楽しんだ後は、近くの村や町に立ち寄るのを忘れない。人影まばらなどんな僻地の町や村にも必ずカフェがあるように、目指す村には必ず一軒は不動産屋がある。不動産屋のウィンドーに貼られている、そこの村や町の物件を眺めながら、美しい森に囲まれた村のメゾン・ド・カンパーニュ用の家の値段の目安を知る。美しい村の一軒家がいったいいくらぐらいで買えるのかしらと、ピクニックがてらパリっ子たちは心弾む思いで、市場調査をするのである。

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楽しいバカンスのために毎月一定額を貯金

住宅購入のための積立貯金に並行して、バカンス積み立てをしているカップルも多い。ただしバカンスは年に一度巡ってくるのだから、積み立てはそのつど更新される。その年最大のイベントである夏のバカンスが終わったとたん、翌年のための積み立てがはじまる。つまり楽しいバカンスから戻ったのも束の間、その月のうちに翌年のバカンスの計画のはこびになるのだからたまらない。私の友人にもバカンスのために働いているという人がいるけれども、なるほどしかり。楽しいバカンスを夢見ながら、毎月一定額をそのために貯金する

バカンスのために働いている彼らにしても、毎年巡ってくるバカンスのたびに、定期貯金をしてまでの豪華な旅をするわけではない。飛行機に乗って、国外のリゾート地にいくのは、せいぜい隔年のこと。フランス国内でまだいっていない地方を探し、自家用車に荷物をどっさり積んで、地図とにらめっこのバカンスもある。一足先に学校が休みになった子供を田舎のおばあちゃんたちに預ける。会社のバカンス休暇にパパとママが子供と合流し、知らない村や町を訪れる。それが普通のバカンスである。