ネタバレ厳禁社会の息苦しさを、ドラマ『あなたの番です』から考える

そんなに敏感にならなくても…
堀井 憲一郎 プロフィール

ミステリーの結末を無邪気にバラす主人公

そして、私がかなり気になっているのが、主人公の「ミステリーの結末をばらしてしまうクセ」である。

田中圭が演じる翔太は、ミステリー好きなのだが、無邪気に結末を話してしまう。

それも「ネタバレ」とかそういうレベルではない。もちろんネタバレではあるのだが、もっと根っこのところから、ふつうにばらしている感じである。物語を要約するときに、とにかく結末を中心に紹介する、という人物設定なのだ。そういう不思議な設定にしてある。

たとえば夏目漱石の『坊っちゃん』を紹介するなら、ああ、教頭殴って先生やめて一緒に住んだばあやは死んじゃってた話ね、というような要約をしそうなタイプなのだ。もちろんそれは他の言動にも現れていて、周りを気にせず自分のおもいこみだけで行動する男として描かれている。主人公なのに同調しにくい設定にされているのが、このくせものドラマらしいところだ。

この菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)夫婦はミステリー好きである。

そもそも出会いは菜奈がカフェで江戸川乱歩の小説を読んでいると、それに気付いた通りすがりの翔太が「これ、すごいいんですよ!」と声を掛けるところから始まっている。作品は『パノラマ島奇譚』、そのまま「犯人が最後、花火と一緒に打ち上げられてばらばらになって死ぬんですよ」と一気にまくしたてて「い、言わないでください。オチ言わないでください。いま読んでるのに」と菜奈ちゃんが抗議する。原田知世は変わらずかわいいですね。

「でもでも、でもでも大丈夫ですよ、オチわかっててもチョーおもしろいので」と言って去っていく。爽やかそうで、じつに困った人である(江戸川乱歩の小説はそのとおりの内容である。ただ犯人探しのミステリーではなく、犯行者本人の手記のように展開するので、大きなネタばらしではないが、でも最後の妖しい結末をばらしているのは確かである)。

 

このほか、彼は何でもネタばらしをしていて、漫画『名探偵コナン』を読んでいる妻に向かって、「あいつもう出てきました? 犯人の…」と言ったり(そこで止められた)、どの映画を見ようかと選んでるときに「タクシーの運転手が連続殺人犯でめちゃびっくりするらしいよ」と言ってみたり、ちょっと考えられないくらい無防備に話している。

ここまで徹底すると、ネタバレ男による“ネタバレ禁止風潮の批判”に見えてくるくらいだ。