2019.07.29
# 仮想通貨

リブラをめぐる誤解…マクロ経済と金融への「本当の影響」はこれだ!

正しい理解が必要だ
唐鎌 大輔 プロフィール

「預金の偏在化」リスク

その上でリブラがもたらす影響として議論を進めるのであれば、やはりリブラの存在ゆえに既存通貨との置き換えが進みやすい環境が用意されてしまうという点は確かに新興国にとって問題含みかもしれない。

新興国の中央銀行がこの事態を乗り越える方法としては「あらかじめドルもしくはリブラ(の背景にある通貨バスケット)との交換レートを固定化する」ことなどが考えられる。この時点で当該国の通貨・金融政策は制約を受けており、それ自体が既存権力のリブラに対する敗北だという考え方はある。

 

次に、(2)銀行部門における信用創造への影響も議論に上がることが多い。リブラが金融政策を無効化するという言説が展開される過程で「既存の銀行部門の預金がリブラに代替される過程で信用創造機能が低下し、銀行貸出が機能不全に陥る」といった指摘である。これはどう考えるべきなのか。

上述したように、利用者がリブラと引き換えに支払った資金(法定通貨である)はリブラ協会がリブラリザーブとして負債側に記帳し、資産側にバスケット通貨の構成比を意識した短期債や預金で運用することになる。

ここでリブラ協会に短期債を売却した売り手の預金には代金が振り込まれるし、リブラ協会も自身の預金を保有することが想定される。リブラが発行されたからといって、世界全体の預金総量が変わるわけではないのである。

「フェイスブックがリブラを通じて銀行部門の預金を吸収するのでマクロ経済における信用創造機能が低下する」という単純な話ではなく、リブラ協会に安全資産を売却する売り手やリブラ協会自身の預金という形でマクロ経済全体の預金は変わらないという点は重要である。

「リブラが民間銀行の預金を代替(吸収)してしまう。ゆえに銀行部門の資金が逼迫する」という言説は一般的に腹落ちしやすいのだろうが、リブラ協会も振り込まれた代金を何らかの形で運用しなければならず、結局は銀行部門の預金に還流することになる。

その上でリブラがもたらす影響として議論を進めるのであれば、世界全体の預金総量は変わらなくても預金の属性(所在国や預金者など)に偏りは出てくるのかもしれない。

リブラリザーブの構成比に関しては「50%がドル、そしてユーロ、英ポンド、円」と議会証言されていることを踏まえれば、これらの通貨圏とそれ以外の通貨圏で預金の偏在化が起きやすく、後者においては金融政策の波及経路への影響が議論される事態があるのかもしれない。

IMFも報告書でこの論点に絡んで「より小さな銀行がより大きな資金調達のストレスや変動を感じるかもしれない(smaller banks might feel greater funding strains, or at least experience greater volatility in funding)」と指摘している。

SPONSORED