入り口を入ると、すべてが見渡せるキッチン。オープンキッチンというよりももっと近しい関係。ひっきりなしのオーダーに亮さんが絶賛調理中。といっても、まったく慌ただしさなし。流れるような自然な動きで仕上げていく。ベテランならではの仕事ぶりだ。まるでラボ? いや、舞台か。ここにも物語があった。
最初に冬瓜のスープ。「ふふ」。思わず笑みがこぼれる野村さん。熱々でとろとろ。漉しすぎてない、ちょっと素朴さを残した仕上がり。続くランチプレートには、「きれい♡」と小さく叫ぶ。ドラゴンフルーツの蕾の素揚げにモウイのマリネ、トマトのオーブン焼きなど、沖縄食材が押し寄せる。メインの熱々の新じゃがと県産豚挽き肉のコロッケはほろほろっと口の中でほどけていく。島豆腐揚げも、ふふふ、いいお味。
店名の〈コント〉は、フランス語で「物語」とか「ショートストーリー」という意味だそう。店主夫妻はこれまでどんな物語を紡いできたのだろう。今日はどんな話を聞かせてくれるのか。料理も器も、いろんな物語を食べ手に雄弁に語りかけてくる。そんなふうに、感じる感じないにかかわらず、ここでは、その奥にある物語と触れ合っていけるのである。そして、その物語はこれからも綴られていく。
PROFILE
野村友里 Yuri Nomura
〈eatrip〉主宰。食を通じて人や場所、モノをつなぎ、広げる活動を行う。映画『eatrip』監督。「TokyoEatrip」「TASTY OF LIFE」など著書多数。舞台「食の鼓動」、「eatripcity creatures」など企画・監修。
●情報は、2019年7月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Norio Kidera Text:Michiko Watanabe Edit:Chizuru Atsuta