大不漁のサンマ、出漁「前倒し」で魚のプロたちがそっぽを向いた理由

初夏の「先取り」は必要なのか?
川本 大吾 プロフィール

北海道東沖~三陸沖などで漁本番を迎えるはずの秋にもサンマは少なく、最近の漁獲量は10万トン前後。これに対し、ここ数年、5~6月に公海で群れができるようになったサンマを集中的に漁獲する外国船は、勢力を増強して大量に漁獲。船上で冷凍させて帰港する。

台湾では、店先でこんがり煙を出しながら焼かれたサンマが、庶民の味として人気。中国ではホテルのビュッフェのメニューにも入っている。

外国の先取りをまねる理由

日本から見れば「資源水準は低位で減少傾向」(水産庁)というサンマ。総量規制を導入し、漁獲制限を実施しており、近年は年間26万4000トンのTAC(漁獲可能量)により、「資源を絶やさず取る」という政策は続行中だ。

日本のTACは、太平洋の広い海域におけるサンマの推定資源量に基づいて設定される漁獲上限。26万トン余りのTACに対し、2018年の漁獲量は約13万トン、17年が8万トンで、半分にも満たない。もっと取っても良いのだが、サンマの魚群が見当たらず、取りようがなかったのだ。

こうした中、大型船を抱える日本のサンマ漁業者団体から昨年、外国船の先取りに加わって「少しでも生産量を増やしたい」と、漁期の撤回を求める声が出たため、農水省は規制緩和に踏み切ったわけだ。

 

漁業関係者によると、遠い公海で漁獲された今年の初サンマは、漁場から4~5日かけて北海道の根室港に寄港。水揚げされ、2日後の5月30日に東京・豊洲市場などにお目見えした。

卸値は関係者の予想通り、安値となった。

初物を前に、鮮魚量販店のバイヤーは「細いし脂も乗っていない」と浮かない表情。「少しでも買いたいと思ったが、想像以上に質は良くない」と卸との取引を見送った。

先取りのサンマ先取りのサンマはスリムで脂の乗りも良くなかった 東京・豊洲市場(江東区)にて筆者撮影

豊洲の卸から初物を少量買い取った仲卸は「こっちの方がうまいよ」と旬の「入梅イワシ」を指さし、仕入れにきた料理屋関係者に薦めていた。イワシはこの時期、脂が乗って年間でも一番おいしいと評判だ。

梅雨時イワシサンマと対照的に脂が乗っておいしいと人気だった入梅イワシ 東京・豊洲市場(江東区)にて筆者撮影

5月下旬から7月上旬まで、大型船の早取りサンマは数回、根室港や岩手県の大船渡港に水揚げされ、豊洲にも入荷。初物よりも若干大きくなりはじめたが、旬の秋には遠く及ばなかった。

受け入れ拒否の漁港も

本州でサンマの水揚げ日本一とされる宮城県の女川港では、早取りサンマの受け入れを拒んだ。

漁協関係者によると「事前に大型船の団体から対応を聞かれ、脂の乗りや鮮度の2点で疑問があったため、買い手がつかないと判断した」という。