その歯の激痛は「歯」が原因じゃないかもしれない

6年間痛みにもんどり打った男性の記録
木原 洋美 プロフィール

思わぬ診断がくだされた

2019年3月、発症から6年目にしてAさんはようやく、冒頭で紹介した和嶋浩一氏のクリニックにたどりついた。

カルテに記された症状は、次の通り。
主訴:右顔面痛と右下奥歯の歯痛。原因が判らないのではっきりさせたい
痛みの性状:鈍い痛みが続き、時々電気が走るような痛み
強さ:強い。仕事をするのに支障あり
頻度・持続時間:ほぼ一日中痛みが続いている
時間的変動:起床時から痛い。仕事中は忘れているときがあり、退社後、家に帰ると痛む
発症の増悪因子:顎を動かすと痛み、食べた後に痛む
緩和因子:ゴルフ練習中は痛みを忘れている

問診とさまざまな検査の後、和嶋氏がくだした診断は「主訴の右顔面痛と右下奥歯の歯痛は右側咬筋 “筋・筋膜疼痛”の関連痛」。Aさんの痛みの原因は、咀嚼筋の一つである右側咬筋に生じた、固く敏感な「筋肉のコリ」による痛み=筋・筋膜疼痛によるものと判明した。

 

6年越しの謎の痛みの正体が「筋肉のコリ」だったとは、信じられない読者は多いかもしれない。事実、Aさんも最初は信用しなかったという。

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筋・筋膜疼痛とはどのようなものなのか、和嶋氏に聞いた。

「実は、こうした筋肉のコリによる痛みが、非歯原性歯痛の約5割を占めています。肩コリが強いときに頭が痛くなったり、歯が痛くなったりすることは知られていますよね。それと同じように、咬筋(頬)、側頭筋(こめかみ)、胸鎖乳突筋(首)にコリが生じると、そこから離れた所にある「歯」に関連痛として痛みが感じられることがあるのです。

Aさんは仕事が忙しく、日中に歯を噛みしめていました。夜間も睡眠障害により熟睡できておらず、四六時中、筋緊張が強かったことが最大の原因です。筋肉の特定の部分が緊張しっぱなしになると、その部分にコリの固い部分が生じます。また、精神的緊張が加わると、筋肉中の血管が収縮し、筋肉の内部の血流が少なくなって敏感になり、痛みを生じます」