その歯の激痛は「歯」が原因じゃないかもしれない

6年間痛みにもんどり打った男性の記録
木原 洋美 プロフィール

痛い、どうしようもなく痛い

2015年、Aさんは痛みをこらえながら働き続けていた。治療しようにも、「原因が分からないのではどうしようもない」という諦めもあった。

ところがある日、新たな異変が起きる。仕事が忙しく、海外出張が続いた後、右側頬部に刺されるような鋭い痛みが走ったのだ。痛い、どうしようもなく痛い。

慌てて受診したのは某大学医学部病院の脳神経外科だった。だが、MRIその他の検査をするも異常なし。「おそらく三叉神経痛でしょう」とのことでテグレトール(R)という薬を処方された。脳内や顔面の神経の異常な興奮を抑え、てんかんや三叉神経痛の発作を軽減する薬だ。しかし、まったく効かなかったため、すぐに服薬を中止した。

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つぎに回された院内耳鼻科では、副鼻腔炎などを調べたが異常なし。つづいて院内口腔外科も受診したが、やはり歯科的な異常なし。最後に、院内のペインクリニックを受診すると、眼窩下孔ブロック(眼窩下への麻酔注射)を数回してもらい、ようやく痛みは軽快し、通院を止めることができた。

とはいえ、痛みの原因は最後まで分からなかった。

 

「もう、死ぬしかない」

2018年、3年間なりを潜めていた痛みが再発する。

Aさんは右頬を抑え、3年前と同じ某大学医学部病院ペインクリニックに駆け込んだ。「とにかくあの注射をお願いします」。顔をしかめて嘆願し、さっそく眼窩下孔ブロックに加え、星状神経節ブロック注射も2回受けた。しかし、どうしたことか、症状はいっこうに改善しなかった。

「なんとかしてください。このままじゃ辛すぎる」

必死に訴えても「原因不明なので治療はできません」と冷たい。すぐに、歯科大学の口腔外科を受診すると、「かみしめが原因かも」と言われ、勧められたのはマッサージ。藁にもすがる気持ちで試したが改善しない。

今度は顎関節症科を紹介され、スプリント(顎関節症治療用のマウスピース)を作成。夜間装着を指示されるが、スプリントを入れると気になって眠れず、起床時に痛みが増したため中止した。

次に都内病院の心療内科から院内ペインクリニック紹介されて受診した。病名不明のまま、リリカ(R)(神経が原因とされる痛み用の鎮痛薬)処方を受けて、服用開始。だがあまりにも眠気が強く出たため、1週間で中止。

「万事休すだと思いました。もう、死ぬしかないのかと」