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その歯の激痛は「歯」が原因じゃないかもしれない

6年間痛みにもんどり打った男性の記録

虫歯・歯周病でなくても

口の中のさまざまな痛みは総称して「口腔顔面痛」と呼ばれている。「首から上の謎の痛みは、ほぼ口腔顔面痛」ともいわれていて、歯痛、歯肉痛を含めて舌、口腔粘膜の痛み、顎の痛み、顔の痛みなどが含まれる。緊張型頭痛も顎関節症も、口腔顔面痛のひとつなのだ。

口腔顔面痛のなかで最も多いのが『非歯原性歯痛』。虫歯や歯周病はないのに“歯が痛い”と感じる病気だ。歯科の国家試験にも出題される病気なのだが、正しく診断・治療できる歯科医は限られているため、なかなか診断がつかず、何年間も苦しむ患者が大勢いる。にもかかわらず、知名度は低い。とくに男性の間での知名度がイマイチだ。

口腔顔面痛のエキスパート、和嶋浩一氏

なぜだろう。慶應義塾大学医学部非常勤講師(元赤坂吉見歯科クリニック)、和嶋浩一氏に話を聞いたところ、たとえば次のような症例があるという。

【原因不明の痛みで、一流病院を6年間転々としたエリートサラリーマン】
Aさん:40代男性、国立大学卒業、一部上場企業 海外事業部勤務の場合

「親知らず」「メンタル」と診断され

2012年、Aさんは右下の奥歯と右鼻の下にズキズキとうずく痛みを感じ、某大学歯学部病院の口腔外科を受診した。最初はただの虫歯だと思い、近所のクリニックを受診したのだが、虫歯も歯周病もみつからなかったため、大学病院を紹介されたのだ。

診察した医師は、「特に炎症はありませんが、それだけ痛みがとれないということは、親知らずの周囲の歯肉が炎症を起こす『智歯周囲炎(ちししゅういえん)』でしょう」と診断。親知らずを抜歯した。

 

だが痛み変わらなかったため、「それなら、非定型顔面痛(原因の分からない顔面痛)だろう」と言う事で薬物療法を開始。といっても、鎮痛剤はまったく効かない。「この病気はメンタル面に問題を抱えている方に起こりやすい特徴があります」との説明を受け、抗うつ薬を服用することになった。多少改善したものの、軽度のうつ状態となり、病院からは自然と足が遠のいた。