自由貿易の理念を捨て、中国の成長を阻止する…米国の戦略は是か非か

中国大ダメージ、しかし世界にも負担が
野口 悠紀雄 プロフィール

中国経済が受けている打撃は意外に大きい 

以上で見た中国の貿易とGDPの動向変化は、どのように評価されるか?

貿易がGDPに与える影響としては、まず輸出や輸入がGDPの構成要素になっていることの影響がある。輸出は需要の一部であるから、それが減れば、GDPは減少する。他方で輸入は控除項目なので、それが減れば、GDPは増加する。

実際の動きを見ると、図表1で示したように、中国の対米輸出は確かに減っている。

他方、図表2で見たようにアメリカからの輸入は、減少率で見れば大きく減っているのだが、変化額では対米輸出減のほうが大きい。

輸出入差額では、18年5月の335億ドルから2019年5月の302億ドルに、33億ドル減少した。年率では400億ドル程度の減少だ。これは、中国のGDP(2018年で14兆ドル)の0.3%に当たる。

これは、上で見たGDPの実際の落ち込み(0.6%ポイント)の半分程度だ。

つまり、実際のGDPは、対米輸出入差から推測されるよりも、2倍程度大きく落ち込んでいることになる。

 

なお、いうまでもないことだが、中国のGDPに影響を与えるのは対米貿易だけではない。

中国の貿易全体では、図表3で見たように、2019年5月は、対前年比で輸出はほとんど不変で、輸入が若干減っている。

輸出入差は、2018年5月の249億ドルから2019年5月の417億ドルへと、むしろ拡大している。したがって、むしろGDPにはプラスの影響があってよいはずだ。

つまり、中国のGDPは、「貿易額の変化に応じてGDPが変化する」という直接効果よりは、大きく落ち込んでいることになる。

こうしたことになるのは、他の需要が落ち込んでいるからだ。とくに重要なのは、設備投資の減少だ。上で述べたように、そうした動きは実際に生じている。

以下に述べる外資の動向は、これに密接に関連している。

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