「なぜ知性は存在するのか」巨大な問いに挑む「物理学帝国」の逆襲

『ディープラーニングと物理学』考察
田中 章詞 プロフィール

たとえば、ランダム電子系の波動関数の強度を深層学習でどの相にあるか判定させることで、全体の相図を描くことができるようになったり、手で解くのが難しい量子多体系の基底エネルギー状態を解くのに機械学習の手法を用いることができたりしてきています。

また、超弦理論の真空の探索に機械学習を用いてみる研究や、超弦理論から派生した「重力理論と場の量子論が双対の関係にある」という考えに機械学習の手法を用いるアイデアも出てきています。このような応用ベースの研究の中から、新たなアイデアや科学的発見を成し遂げるものが出てくるかもしれません。

超弦理論超弦理論のコンセプチュアル・アート Photo by Getty Images

物理学徒は「不思議だと思い続ける」人々

ニュートンによる力学と微積分の方法の創始から数えて300年あまり、多くの部分で物理学は数学と共に発展してきました。この歴史が示す通り、この2つの学問に何らかの深いつながりがあるのは万人が認めるところだと思います。

一方で、物理学と深層学習を含む機械学習の方法が、物理学と数学ほどの深いつながりを持ちうるかは、まだ不明だというのが正直なところです。ただし、世界中で多くの物理学者が深層学習に興味を持ちはじめているのは確かです。

筆者はいわゆる物理学帝国主義者ではありませんが、物理学者、あるいは物理学を志すような人種というのは、あらゆることに興味を持ち、勉強し、そして何かを成し遂げることに長けている、ということは存分に認めるところです。

物理学帝国の逆襲(!?)の火蓋が切って落とされる日も、もしかしたらそう遠くないのかもしれません。