日本人が知らない「ウナギの闇」どうしてこんなに高くなったのか?

「土用の丑」が国際問題になるまで
松岡 久蔵 プロフィール

暗躍する「ウナギの帝王」

シラスウナギは、長さ約6cm、重さ約0・2gと爪楊枝程度の大きさで、少量の水があれば持ち運べるため、実は採捕者が全国で約2万人を超える隠れた人気産品だ。1人あたり1日数gと極めて少量しか獲れないことが、採捕量の管理が非常に困難な理由になっている。

ある養鰻業者は、「密漁ウナギ」が流通する背景について明かす。

「河川などで捕れたシラスウナギは仲買業者に渡り、そこから養殖業者へ渡っていきます。この過程で、自治体に申告されていない分を仲買業者がこっそり買い取り、裏ルートで養殖業者に売るのが、いわゆる密漁品です。

1990年代までは、シラスウナギの流通管理はザルでした。養鰻業が盛んな宮崎県では、1995年に『うなぎ稚魚の取扱いに関する条例』を制定して密漁品の排除に当たっていますが、それまでは県内採捕量の約7割が密漁品で、許可を受けた漁民が採捕した中からも3分の2が非正規ルートで流通しており、正規ルートでの供給がわずか1割という悲惨な状況でした。

もちろん、裏で取り仕切っているのは暴力団で、非正規ルートのシラスウナギは平価の3倍以上で買い取られていたようです。九州のある県には、当時荒稼ぎした『シラスウナギの帝王』と呼ばれる大物がいて、フェラーリを複数台保有するほど儲けていたのは業界では有名な話です。

今では問題が表面化して全国の自治体も管理強化に乗り出したため、密漁自体は減っているでしょうが、根絶されたわけではないでしょう」

 

業界では「暴力団の資金源」という悪いイメージを払拭するため、全国の仲買業者で構成される「日本シラスウナギ取扱者協議会」が18年に発足した。

シラスウナギを漁獲した場所や時期などを「産地証明書」の形で記録して養殖業者に伝え、取引の正常化を図るのが活動内容だが、業界関係者からは「第三者の監査ではない上、仕入れの段階でウソをつかれれば、証明書の正当性を証明するのは難しい」と実効性に疑問の声も上がっている。シラスウナギの流通管理は、まだまだ課題山積の状況だ。

中国が規制から「逃げ回る」背景事情

近年、シラスウナギの激減は国際問題になっており、2012年からニホンウナギを利用する日本、中国、台湾が協議を開始した。韓国もその後加わり、14年9月には拘束力のある法的枠組みを検討することなどを盛り込んだ共同声明が出された。

この声明では、4カ国・地域の上限量が定められ、中国が最多の36t、日本が21・7t、韓国が11・1t、台湾が10tとされた。しかし、15年以降の会合は中国が5年連続で欠席し続けており、協議が進まなくなった。水産庁関係者はこう明かす。

中国は14年の段階では漁獲上限の制定に前向きだったのですが、15年になっていきなり、政府代表が『帰る』と言い出したのです。その直前には別の会議に普通に出席していたのに、驚きました。

世界で最も沢山シラスウナギが捕れる中国からすれば、規制なんて鬱陶しいというのが本音なのでしょうが、どうも事情はもっと複雑なようです。

中国国内でもウナギの消費量が伸びている中で、絶滅危惧種として取引が規制されているにもかかわらず密漁品が横行している『ヨーロッパウナギ派』と、『ニホンウナギ派』との間でどうやら対立があるらしく、それで国内の関係者がまとまらないようなのです。両派閥ともに販売量を減らしたくないようなので、中国のボイコットはまだまだ続くでしょう」

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